幼馴染×存在証明

日凪先輩との勝負から1週間と少し。


今日はとうとう新歓ダンスパーティの日だ。


あれから日凪先輩とは委員会で一緒になるとよく話すようになった。


相変わらず顔は前髪で隠していて、誰も普段の日凪先輩とテニス部で試合をしていた先輩とを関係付ける人はいなかった。


佐倉先輩の方は、ウェア姿を盗撮されて暫く大変だったようだけど…。


何だか申し訳ない。


新歓の準備に追われていたアスカとも、特に関わることなく気付けば新歓当日を迎えていて。


私は用意していたドレスに身を包み、日が沈むころ、会場のホテルに到着した。


ホテルのロビーは、様々な色のドレスに身を包む帝峰の生徒たちで賑わっている。


男子生徒の姿は見当たらず、どうやら集合場所が分けられているようだった。


中央委員のアスカとは別々に家を出たため、今日はまだ会っていない。


「涼香ー!こっちこっち!」


遠くの方で水色の爽やかなドレスに身を包む遥が手を振っている。


近くには美久と玲華もいるようだ。


「わぁ、涼香ちゃん、すっごく綺麗…」


近くにきた私を見て、美久がうっとりと呟いた。


私はビージュが星のようにあしらわれた深い青色のドレスに身を包んでいる。


髪は、サイドを植物をモチーフにしたシルバーのアクセサリーで留めて、後ろ髪はそのまま降ろしている。


「まるで月の妖精ね」


続いて玲華が言う。


「ふふ、ありがと。2人ともすっごく似合ってるよ、もちろん遥も。」


美久は淡い緑色の可愛らしいフリルドレスで、玲華は大人っぽい紫のマーメイドドレスだ。


3人とも髪型をアップにまとめ、普段とは違う雰囲気を醸し出している。


「ま〜、間違いなく今日のパーティの華は涼香ね。この感じじゃ、仮面を付けたところでそれは揺らぎそうもないわ」


「仮面…?」


身に覚えのない単語に私は首を傾げた。


「あれ、知らない?一昨日くらいに発表があったのよ。

アスカ先輩と佐倉先輩がパートナーを作らなかった弊害か、ギリギリまで希望を持つ女子が急増して、パートナーがいない生徒が続出したのよ。

その解決策ってとこみたい」


遥が受付の方に並んでいる仮面を指差して言った。


「ええ。仮面を付けてその場の気に入った相手と踊るイベントが組み込まれたわ。そこでパートナーを作ってもいいみたいね」


なんと。運営で忙しい2人がパートナーを作っていないとは聞き及んでいたが、そんな措置が為されていたとは。


結果的に仕事が増えては、希望を持ったところで本末転倒もいいとこだが。


集合場所が男女で分かれているのもそれが理由だったのか、と私は1人納得した。