幼馴染×存在証明

制服に着替え、帰宅の準備をしていた頃。更衣室の窓から、夕暮れ空を見て、私はふと思い出した。


しまった、ジュリに連絡していない。


東雲先輩を誘うので頭がいっぱいで、すっかり忘れていた。


急いでスマホを取り出し、電話を掛ける。


『もしもし?』


「ジュリッ、私、放課後、すっかり忘れて…」


慌てて言葉にすると、電話口のジュリが笑った。


『ふふふっ大丈夫、落ち着いて。アスカから聞いてるよ。友達とテニスしたんだって?』


「アスカから…?」


急いで更衣室から出て辺りを見回すが、見られている気配はない。


テニスしている間も、特に違和感はなかった。


噂でも聞いたのだろうか。


『今日はもう遅いから、そのまま家に帰りなよ。車向かわせたから、ね?』


「あ、ありがとう…」


『じゃあ、明日は会えるといいな』


「うん、また明日」


別れを告げて電話を切る。


隣で「何!?誰!?女!?男!?」と騒いでいる遥をあしらいつつ、私は考える


今日はともかく、この間はアスカはどうやって私の行動を把握したのだろうか。


佐倉先輩に呼び出されていることは知らなかったから、盗聴の類ではないはず。


となると、位置情報を把握する何かか、人を使っているとか。


「嗚呼…あたしにも、1人でいいからイケメンが構ってきてくれないかしら」


瞳を潤ませ夕日を拝む遥を見て、アスカ相手に考えるのも馬鹿らしくなってきた私は、学校を出る頃には疑問に思ったことさえ忘れてしまっていた。