幼馴染×存在証明

着替えを終えて更衣室を出ると、コートは大勢の人で溢れかえっていた。


聞けば、この短時間で「佐倉颯がテニス部で試合をするらしい」と噂が噂を呼び、佐倉颯目当ての子たちが押し寄せてきたのだと言う。


「ねぇ、あの人誰?」


「うそ、めっちゃイケメンじゃん!」


「あんな人学校にいた?OBかな?かっこよすぎる」


どうやら佐倉颯以外にも噂となっている人がいるようで、視線の先へと目を向ける。


「…?」


佐倉颯の隣にいる彼は、ヘアバンドで髪を上げていて、涼やかな目元と高い鼻が印象的だ。


どちらかというと甘い顔立ちなのに、受ける印象は爽やかで。


日焼け知らずの白い肌に濡れたような黒髪が映えていた。


グローブを咥えた口元には…ほくろが、一つ。


あれは、まさか…


「東雲、先輩?」


東雲先輩がこちらに気付き、挨拶するように軽く手を挙げた。


隣の遥は、顎が外れているんじゃないかと言うくらい、口を開けている。


「か、顔……強ッ…」


確かに。


佐倉颯にも引けを取らないイケメンぶりだ。


東雲先輩、こんな顔をしていたのか。