幼馴染×存在証明

お互いが小学生になり、しばらく経った頃。


私は学校でも平和には暮らせまい、と覚悟していたのだが、意外にも学校でのアスカは、私に対して乱暴なことをすることはなく。


ただ、代わりというように、気に入らない人間を片っ端からいじめるようになった。


その内容は、私が普段、彼にされていたような事とは違い、話に聞くだけでも背筋が凍るような、それこそ"本当の"いじめで。


その惨状を知った時、自分が受けていた仕打ちが、彼にとっては揶揄いであり、もしかしたら戯れにすぎない程度のものだったのかもしれないと思った。


しばらくすると、アスカはいじめの現場に、私を呼び出すようになった。


そして傷つけられた子の前に私を立たせて、聞く。


「涼香、お前は、どうしたい?」


と…。


彼は私がこの状況を嫌がっているのを、充分理解していた。


理解した上で、楽しんでいた。


私はその現場を見るたび、アスカにされてきたことを思い出し、いじめられている子と自分を重ねた。


程度は違ったかもしれないが、同じ人間から与えられる恐怖を私は知っている。


でも、だからこそ、アスカに逆らうことなどできなくて。


私はいつも決まって答えた。


「……アスカの好きにしなよ。」


声は震えていたかもしれない。


涙目で、顔も青かったかもしれない。


それでも、助けを求める視線を無視し、最後の希望を絶望に変えたのは、紛れもない事実。


私は彼の言葉一つで、"過去の自分"をもいじめる人間になってしまった。


私の様子をじっくり観察したアスカの、底冷えする瞳が満足げに弧を描いて…


その後はもう、見ないようにするので精一杯だった。