幼馴染×存在証明

図書室に入り、貸し出しカウンターの方を確認すると、静かに本を読んでいる男子生徒が1人。


確かに意識して見ないと、そこに人がいるとは思えないほど存在感が希薄だ。


前髪が長く、目にかかっているからか、遠くからでは顔がよく分からない。


私は緊張を抑え、東雲日凪と思われる人物に声をかけた。


「こんにちは。図書委員の花咲涼香です。少し、お話しいいですか?」


東雲先輩がチラリとこっちを見た気がする。


訪れる沈黙。


図書室の静けさをいつにも増して感じる。


すると、キィ、と音を立てて、東雲先輩が自分の隣にある椅子を引いた。


座れということだろうか。


とりあえず、会話することは許されたようで、胸を撫で下ろす。


貸し出しカウンターに回り、東雲先輩の隣に座った。


ふわりと、ホワイトリリーの柔らかい香りが漂ってきて、私は少しドギマギした。