幼馴染×存在証明

翌日、私は昼休みに図書室へと向かっていた。


2-6 東雲 日凪


真美に貰った紙には、丁寧な文字でそう書かれている。


『彼の名前は、東雲日凪(しののめひな)。2年の図書委員の男子生徒。

生徒会との繋がりを得たくて図書委員を希望する子も多い中、彼は純粋に本が好きで図書委員をしてるの。

物静かで、普段は影が薄いのだけれど、実は結構凄い人なのよ。』


委員会の時の自己紹介を思い返してみるが、確かに名前には覚えがあるのに、顔が思い出せない。


あの時は、佐倉颯がいないかよく確認したので、委員会のメンバーの顔と名前は一通り覚えたはずなのだが。


『一度入れた知識で、大体何でもこなせてしまうの。興が乗れば大会に出て、賞を総なめにするから、一部ではちょっとした有名人。

家柄も良くて、彼なら涼香ちゃんの相手としても申し分ないと思うわ。

何より、普段は存在感を消しているから、何かあったとしても噂になりにくいと思うの』


流石は真美。


あの短時間で私が求めている人材を的確に捉えてきた。


『ただ一つだけ…彼、目的もなく人の多い場所に出るタイプではなくて。

今回のダンスパーティも、参加する意思があるかは微妙なところね。だから、彼を口説けるかどうかは涼香ちゃん次第だわ。』


真美は、もう少し誘いやすい相手を紹介できなくて申し訳ないと言っていたけど、そうでないからこそ信頼できると私は思った。


きっと真美は、もっと適当で簡単な相手を紹介することもできたはず。


でもそうしなかったのは、私のためを思って、真美自身が信頼できる人を選んでくれたのだろう。


真美の言葉を思い返しているうちに、私はいつの間にか図書室まで来ていた。