幼馴染×存在証明

次の日から、アスカはことあるごとに私に突っかかってきた。


私が興味を示したり、気に入ったりした物は片っ端から奪い、似たような物を持っていれば、私の方のは必ず壊してきた。


物の置き場所や遊ぶところは制限され、うっかり破った時には水を掛けられたり、泥の上に落とされたりした。


そんな彼が、私以外の家人には、「あまり喋らず、おとなしい」という印象を抱かれているのが、最初は本当に理解できずにいて。


ある程度大人の目を盗んでやっているとはいえ、しばらくすれば私への仕打ちを知らない人はいなくなった程、苛烈な面を持ち合わせていることは周知されていたはず。


ただ、アスカは使用人などといった、親族以外の家人には、これといって興味がないのか、空気のように接していたようで。


実害がないからか、アスカを諫めてくれる大人はいなかった。


特にアスカは、私と兄妹として扱われることを嫌っていて、客人や使用人に、私と同列に扱われた日には、大荒れした。


そして彼のただ1人の兄弟、兄であるジュリのことを、私が口にするのを大層嫌っていた。


「涼香、お前は居候なの。分かる?」


自分がこの家の人間ではないことなんて、自分自身が一番よく理解していると思っていたが、その気持ちとは裏腹に、私は指摘されるたび傷ついた。


本心では自分の居場所を、帰属意識を、この家に求めていたのだと思う。


血の繋がりはないとはいえ、両親の葬式に来てくれた一族。


私にとってこの家は、両親との最後のつながりだった。


その上、食事や生活用品、安全や健康管理、生活に必要な全てのことにおいて、余りあるほど与えてくれていて。


アスカのことに関して以外は、私はこの家に対してかけがえのない恩を感じていた。


ただあまりにも日常のほとんどを、アスカという悪魔に支配されてしまったからか、幼い頃の記憶というものには、良い思い出がない。