帝峰に入学して、1週間。
「涼香ちゃん!こっちこっちー!」
午前の授業が終わり、食堂へ向かう私は、人波に揉まれていた。
「毎度思うけど、すごい人の数…明日からお弁当にしようかな」
「えっ!涼香ちゃんがそうするなら、私もそうしようかな…」
そう目の前でそうもじもじと呟く少女は、香坂美久。
ここ最近話すようになったうちの1人だ。
「ちょっと!嘘でしょ?入学してまず最初にすることは、できるだけ市場に出ることよ!教室だと、クラスの男子しかいないじゃない‼︎」
その隣で悲鳴を上げるのが、大西遙。
「そんなこと言っても、涼香がいたらどこに行ったって結果は同じだと思うけれど。涼香の前じゃ、大抵の女子は景色と同じよ」
サラリと黒髪を耳にかけながらそう呟いたのは、細井玲華。
3人とも、移動教室や昼食のタイミングがよく会うので、自然と一緒に過ごすようになったのだ。
玲華の言葉に、美久が大きく頷きながら同意した。
「私、初めて涼香ちゃんを見た時、びっくりしたんだ。御伽話に出てくる妖精みたいで、現実味が無いんだもの。」
美久の大きな瞳でまじまじと見つめられて、少しドキドキする。
玲華も近寄って私の髪をじっと見る。
「本当に…私もケアしてる方だけど、ここまで艶があってダメージのない黒髪の人は初めて会ったわ。
それにその目も、天然でしょ?」
そう言われてふと近くの窓に映る自分の姿を見た。
ぼんやりと白く浮かび上がる顔に青みがかった瞳が2つ。
アスカのような碧眼ではなく、夜空のような暗い青。とはいえ室内で見ればほぼ黒なのだが。
「うん…まぁ」
すると、隣で何故か自信ありげに遥が鼻を鳴らした。
「まぁ、涼香が注目の的でいれば少しくらいおこぼれがあるかもでしょ!涼香!期待してるわよ〜‼︎」
屈託のない笑みを向け、バシバシと私の背を叩く遥がおかしくて、思わず笑ってしまう。
自分の容姿についてあまり深く考えたことはないが、それなりに整っているのだろうという自覚はある。
ただ褒められると同時に、僻まれることもあり、それどころかむしろアスカには貶される事の方が多かったので、自信は…ない。
「にしても、涼香ちゃんの言うとおり、今日はいつも以上に人が多いよねぇ」
「あぁ、"佐倉颯(さくら はやて)"のせいじゃないかしら?」
玲華の言葉に首を傾げる。
「佐倉颯…?」
「えぇ、2年の先輩方が昨日騒いでたわ、クラスに芸能人が転校してきたって。もう王子って呼ばれているみたいよ…ほらあそこ。」
玲華の視線の先を辿ると、確かに2年生の人だかりができている。
よく見えないが、おそらくそこに転校生がいるのだろう。
すると、遥が鼻息荒くして椅子から立ち上がり、熱弁した。
「そう、佐倉颯‼︎雑誌、CM、ドラマ、ありとあらゆるメディアで今引っ張りだこの超有名人よ!
何で急に転校してきたのかは知らないけど、とにかく玉の輿なのは間違いないわ‼︎
帝峰に転校してくるのってすごく難しいんだから、きっと勉強も相当できるはずよ!」
「涼香ちゃん!こっちこっちー!」
午前の授業が終わり、食堂へ向かう私は、人波に揉まれていた。
「毎度思うけど、すごい人の数…明日からお弁当にしようかな」
「えっ!涼香ちゃんがそうするなら、私もそうしようかな…」
そう目の前でそうもじもじと呟く少女は、香坂美久。
ここ最近話すようになったうちの1人だ。
「ちょっと!嘘でしょ?入学してまず最初にすることは、できるだけ市場に出ることよ!教室だと、クラスの男子しかいないじゃない‼︎」
その隣で悲鳴を上げるのが、大西遙。
「そんなこと言っても、涼香がいたらどこに行ったって結果は同じだと思うけれど。涼香の前じゃ、大抵の女子は景色と同じよ」
サラリと黒髪を耳にかけながらそう呟いたのは、細井玲華。
3人とも、移動教室や昼食のタイミングがよく会うので、自然と一緒に過ごすようになったのだ。
玲華の言葉に、美久が大きく頷きながら同意した。
「私、初めて涼香ちゃんを見た時、びっくりしたんだ。御伽話に出てくる妖精みたいで、現実味が無いんだもの。」
美久の大きな瞳でまじまじと見つめられて、少しドキドキする。
玲華も近寄って私の髪をじっと見る。
「本当に…私もケアしてる方だけど、ここまで艶があってダメージのない黒髪の人は初めて会ったわ。
それにその目も、天然でしょ?」
そう言われてふと近くの窓に映る自分の姿を見た。
ぼんやりと白く浮かび上がる顔に青みがかった瞳が2つ。
アスカのような碧眼ではなく、夜空のような暗い青。とはいえ室内で見ればほぼ黒なのだが。
「うん…まぁ」
すると、隣で何故か自信ありげに遥が鼻を鳴らした。
「まぁ、涼香が注目の的でいれば少しくらいおこぼれがあるかもでしょ!涼香!期待してるわよ〜‼︎」
屈託のない笑みを向け、バシバシと私の背を叩く遥がおかしくて、思わず笑ってしまう。
自分の容姿についてあまり深く考えたことはないが、それなりに整っているのだろうという自覚はある。
ただ褒められると同時に、僻まれることもあり、それどころかむしろアスカには貶される事の方が多かったので、自信は…ない。
「にしても、涼香ちゃんの言うとおり、今日はいつも以上に人が多いよねぇ」
「あぁ、"佐倉颯(さくら はやて)"のせいじゃないかしら?」
玲華の言葉に首を傾げる。
「佐倉颯…?」
「えぇ、2年の先輩方が昨日騒いでたわ、クラスに芸能人が転校してきたって。もう王子って呼ばれているみたいよ…ほらあそこ。」
玲華の視線の先を辿ると、確かに2年生の人だかりができている。
よく見えないが、おそらくそこに転校生がいるのだろう。
すると、遥が鼻息荒くして椅子から立ち上がり、熱弁した。
「そう、佐倉颯‼︎雑誌、CM、ドラマ、ありとあらゆるメディアで今引っ張りだこの超有名人よ!
何で急に転校してきたのかは知らないけど、とにかく玉の輿なのは間違いないわ‼︎
帝峰に転校してくるのってすごく難しいんだから、きっと勉強も相当できるはずよ!」
