幼馴染×存在証明

コンコンと、病室のドアを叩く。


「はぁい」


穏やかな返事に、今日も調子は悪くなさそうだと安堵し、ドアを開ける。


「学校、どうだった?」


ベットに座ってキーボードを叩いていたジュリに、そう問われる。


相変わらずの整った顔で、疲れも癒される笑顔だ。


「ん〜、まだよく分からない。校舎は大きくて綺麗だったよ」


私はベット横の椅子に腰掛け、ジュリの足元近くに上半身を投げ出す。


兄のように思ってくれて構わないというジュリに甘えて、いつしか私は敬語は使わなくなった。


そう言うところは、ジュリとアスカは大違いだ。


「ふふ、そっか。まだ入学式だからね。

確か…今期の生徒会は若宮と桜井だから、入学式は簡素化されたのかもね」


彼らは興味のないことに対しては効率厨だから、と続けるジュリに質問する。


「若宮に桜井って、生徒会長と副会長?ジュリはなんで知ってるの?」


むく、と顔だけジュリの方へと向ける。


「あぁ、アスカから聞いてるのもあるけど…

生徒会長って、首席入学者のことは次期会長候補としていろいろ調べるんだよ。

俺が会長だった時、若宮と桜井は首席と次席で入学してきた一年生だったんだ。」


「へぇ…じゃあ、私も調べられてるってこと?」


「んー、基本的には1つ下の学年までだから、アスカのことは調べただろうね。

涼香を調べるかは分からないけど、あの子たちは、なんとなく調べる気がするなぁ」


俺もそうしたわけだしね、とにこやかに笑うジュリが、何故だか少し怖い。


「ふふ、そんなに気張らなくて大丈夫だよ。

お酒やタバコとか、他にも学校の風紀を乱すような悪いことしてないかチェックするだけだから。」


「風紀を乱すような悪いこと?」


「うん、遊び歩いてたりとか…男女関係にだらしなくないかとか、ね。」


なるほど確かに、と私はふとアスカを思い浮かべる。


アスカはあれでいて、意外にも女遊びをしない。


特に中学あたりで、性格もだいぶ丸くなったので、アスカに恋する女の子は多かったように思う。


だから経験はあるだろうが、取っ替え引っ替えしたりしている様子がないのは、そういう理由があるからかもしれない。