幼馴染×存在証明

再び沈黙が訪れる。


アスカを見ても、無表情のままで、感情はあまり読めない。


彼から離れても三嶋から追い出されることはなかったというのに、どうも私の気持ちは晴れなかった。


むしろ何故か悲しみとも取れる感情が心の中に存在している気がして、どうにも居心地が悪かった。


「明日から、なんだよね?今日はまだ…」


「お前さ」


アスカが言葉を遮る。


いつもより少し、声が低かった。


そして初めて、おそらく出会った中で本当に初めて、真剣な眼差しでこう続けた。


「あんまりあの男に、気を許すなよ」


「…?」


唐突に思いもしないことを言われて、頭にハテナを浮かべる。


その顔を見たアスカは目を細め、鼻で笑った。


「なっ…」


真剣に聞いていたのに、一気に脱力する。


「男って、なに、総帥のこと?」


もしかして、また、勘違いするなどでも言いたいのだろうか。


言われなくても、私は総帥のことを養父だと…ましてや家族だとは、思っていないのに。


私の問いに、アスカは少し考える素振りをして、目を閉じた。


しばらくそうしていたかと思えば、一息ついて立ち上がる。


「…帰る」


機嫌が悪そうには見えないが、なんだか、今日は本当にアスカと目が合わない。


「あ、アスカ、ちょっと…」


「ジュリのとこ戻ったら?」


そう言って去るアスカの背中を、私は追いかけることができなかった。