幼馴染×存在証明

状況を整理できたのはその10分後のことだった。


閑散としている院内の談話スペースで、総帥と私、そしてアスカとの間に気まずい沈黙が流れる。


不謹慎ではあるが、ジュリの病気のおかげで、私は役割を失わずに済んだと言うことだ。


首の皮が一枚繋がった、そんな心地だった。


「涼香、お前に相談もせず決めてすまなかった」


「いえ…。もちろんアスカのことは驚きましたし、それに、総帥が私の進学を考えてくださっていたとは知らなくて…」


渡されたコーヒーを飲み、落ち着いた今、素直な気持ちを吐露する。


「なんだ、お前も帝峰に行くものだと思っていたが」


「…はい、確かに、行けたらいいなとは思ってました。でも、私は…」


居候の身だから。


口にはしなかった言葉に気付いたように、総帥がため息をつく。


三嶋の社交に顔を出すようになってからは、ある程度三嶋の人間として認められているのではないかと、もしかしたら、高校も通わせて貰えるのではないかと淡い期待を抱くこともあった。


だがあくまで、そうなればラッキーだと思っていただけで、義務教育の期間が終われば、切りよく縁を切られる覚悟もしていたのだ。


「そろそろ我が家のように感じてくれているのではないかと思ったが、そう上手くはいかないものだな」


総帥はそう呟くと、予定があると言って席を立ち、談話スペースにはアスカと2人だけになった。