幼馴染×存在証明

「今日付でアスカから涼香を外すことにした。」


グラリと、視界が揺れた。


血の気が引き、指先が震えている。


とうとう恐れていた事態が起きたと、息が苦しくなる。


何をしてしまったのか、どこが及ばなかったのかと、思考を巡らせる。


三嶋から追い出されれば、私は今度こそ本当に天涯孤独だ。


「父さん、言葉が足りてません。」


そのとき、やっと総帥の後ろにいたアスカが言葉を発した。


なんだか、ついさっきまで聞いていたはずなのに、久々に聞く声に感じた。


いつになく、敬語を使っているからだろうか。


「あぁ、すまんな、涼香。お前にはジュリについてほしいんだ。」


「あ…、え…?」


総帥の言葉を理解するのに、10秒はタイムラグがあったように思う。


それはジュリも同じようで、困惑した様子で総帥とアスカを交互に見ていた。


「…俺に?」


「あぁ。そろそろ、アスカに私の仕事を覚えさせようと思ってな。

しばらくアスカを借りたい。

来年は涼香も受験だし、見舞いのついでにジュリに勉強を教えてもらった方がいいだろう。」


受験…?私が?いったい、どこを?なにを?


一気に情報を伝えられ、思考を上手く整理できずにいた。


「それにジュリ、お前は前に、アスカが羨ましいと言っていただろう」


「…、あー…」


総帥の言葉にジュリは珍しく耳を染め、視線を逸らした。


羨ましい?、何のことだろうか。


「……アスカは了承してるの?」


ジュリが、総帥の後ろにいるアスカに問いかける。


アスカはしばらく沈黙したのち、感情の読めない顔で小さく首を縦に振った。


「お前は……、はぁ。俺、熱出たかな」


そうジュリは呟き、少し1人にして欲しいと言って、私たちは病室の外へと出された。