グループは順調に人気を伸ばして、
SNSのフォロワーも日に日に増えていった。
そして19歳の夏にはアリーナツアーが決まり、空気が一変する。

「これ、もしかして……」

ファンの間で、ささやかれる声。
デビューが来るかもしれない。

もちろん、俺もその気でいた。
ツアーが終われば、きっと正式発表がある――と。

けど、なかった。
いつまで経っても、何も起きなかった。

その間に、他の研修生グループがデビューを果たした。
けど、どれも俺たちより年上ばかりのグループだったし、
順番がまだ回ってこないだけに違いない。

だったらその間に、もっと力をつければいい。
作詞もしたし、作曲にも挑戦した。
振り付けも考えたし、ラップにも手を出した。アクロバットもできるようになったし、ローラーもものにした。
ファンサは全力。
自分の担当じゃないファンにも、目が合えばちゃんと手を振った。
ブログに載せる自撮りも投稿もぬかりなく。

そして、どんなときでも楽しげに。
“努力してます感”は死んでも出さなかった。
だって、そんなのは二流のすることだから。

そんな毎日を、3年。
結局、デビューの話は一度も来なかった。

風向きが、変わってしまったのだ。

事務所の大きなスキャンダルが公になり、
俺たちを取り巻く情勢は一気に不利になった。

経営陣は総とっかえ。
研修生のグループはひとつ残らず白紙に戻された。

そして、そこにーー俺はいなかった。