友達に無理やり連れてこられた夜の街___
高層ビルの最上階
黒く光る扉をくぐると
まるで別世界だった
「玲那…緊張してる?」
横で友達が軽く笑う
「別に」
冷めた声で返した
正直、緊張よりも──
やっと違う世界に入れた気がしてた
学校の男子なんてガキみたいで
くだらない話しかできなくて
イケメン?優しい?
そんなもん何回付き合ってもすぐ飽きた
「…玲那、ほんと変わってるよね」
友達は苦笑いしながらグラスを弄った
「だってさ、もうどうでも良くない?同い年とか」
「…まぁね」
お金のことだって特に心配してない
バイトで稼げるし、親もうるさく言わない
それよりも
退屈な毎日から抜け出したくてしょうがなかった
「春川さん、お連れします」
案内されたソファ席に座る
薄暗い照明と、グラスの中で揺れる氷の音だけが静かに響く
そこに現れたのが──彼だった
黒のシャツにシルバーのネックレス
目が合った瞬間、息が止まった
「……こんばんは」
低く落ち着いた声
目が笑ってない
「担当の飛悠(ひゆう)です」
「…春川 玲那(れな)、です…」
思わず目をそらす
けど、心臓だけが騒がしかった
「高校生?」
「…なんでわかるの?」
「なんとなく」
その返しが妙に冷たくて
だけど逆に
もっと話したくなる自分がいた
──こういう人に、惹かれたことなんて一度もなかったのに
あの日から
___私の全部が少しずつ狂い始めた



