「最近…玲那ちゃん来ないね」

同僚のホストがふと口にした

飛悠はグラスを拭きながら、軽く肩をすくめる

「まぁ…そういう時もあるだろ」

「常連になりそうだったのに」

「学生だしな」

あくまで軽く流す

いつもの自分なら、それで何も思わないはずだった

だけど──

グラスに映る自分の顔を見ながら
わずかに胸の奥がざわついてた

 

──あいつ、今なにしてんだろうな

 

別に特別扱いしてたわけじゃない
他の客と同じ
そう思ってた

けど、気付けば
席に現れない日が続くと
少しだけ物足りなさを感じてる自分がいた

 

無理に甘えてくるわけでもなく
わがまま言うわけでもなく
静かに隣に座るあの距離感

あの絶妙な”間”が、妙に心に残っていた

 

──いや、仕事だろ

自分に言い聞かせるように
もう一度グラスを拭き上げる