夜の繁華街を
わざとじゃないような顔をして歩いてた

ほんとは、店の前を通るのが目的だったのに

 

──たまたま帰り道だから

そんな言い訳を心の中で何度も繰り返してた

 

店の入り口近くまで来た時
ふと、黒い車が停まってるのが目に入った

数秒後
扉が開いて、出てきたのは──飛悠だった

スーツ姿の男性と言葉を交わして
軽く会釈をして別れる

誰なのかは分からない
けど店の人じゃない気がした

 

そのまま歩き出した飛悠は
スマホを見ながらゆっくり歩いていく

私はとっさに物陰に隠れた

見つかりたくなかった
でも、目は追ってしまう

 

──誰と連絡してるんだろう

──今からアフター?

頭の中で
勝手にいろんな想像が膨らんでいく

 

けど…
今夜は誰かと一緒じゃなかった

少しだけホッとする自分に
また自己嫌悪が押し寄せた

 

「……」

歩き去る背中を
ずっと見送ってしまっていた

ただ、胸の奥は静かに疼いたままだった