家に帰ると、リビングには母親が一人でテレビを見ていた

「おかえり」

「……ただいま」

それだけの会話
この家は、昔からこんな感じだった

父は仕事で家にほとんどいない
母も昔からあまり干渉してこない

勉強しろとも言われない
恋愛の話もしてこない

自由と言えば自由
でも時々、変な孤独感に襲われることがあった

 

キッチンの冷蔵庫を開けて
適当にコンビニのプリンを取り出す

甘いものを口に入れても
胸の中のざわつきは消えなかった

 

スマホを見れば
通知も特にない

だけど頭の中は
自然と飛悠のことばかり浮かんでくる

今日、名前を呼ばれた瞬間
胸がぎゅっと締め付けられた感覚が
まだ残ってた

 

母の視線を感じて
ふと顔を上げる

「最近、帰り遅いわね」

「…別に」

「大丈夫?無理してない?」

「してない」

それ以上は何も聞かれなかった

母はまたテレビに視線を戻す
私はプリンを食べ続ける

会話はそれで終わり

 

──私が何をしてても
たぶん、母は知らないままだろう

知られたくもない
でも、時々
少しだけ気付いてほしいような気もする

わがままだなって、自分でも思う

 

だけど今は


飛悠くんに会いたい気持ちの方が
全部を押し流してた