「それじゃあ、お母さん行ってくるから」
そう言って、玄関でせかせかと靴を履くお母さん。
朝の6時に聞く声は、大体この一言。
毎日見送らなくてもいいのに、ってお母さんは言うけど、私は嫌だ。
お母さんは、私が友達と仲良く話してる時も、仕事をしてくれているんだから。
早寝早起きは大事でしょ?って答えたら、お母さんはそう?って言いながらネクタイを締めた。
ドアに手を伸ばすお母さんに、声をかける。
「行ってらっしゃい。あ、晩御飯何がいい?」
晩御飯ぐらいは、お母さんに選んで欲しい。
私のわがままで全てが決まる、なんて嫌だから。
「んー、じゃあハンバーグ、お願い出来る?」
「わかった、作っておくね」
頭の中に材料や作り方を思い浮かべながら、お母さんを見送る。
「毎日ありがとう。じゃあ行ってくるわね」
「お仕事頑張ってね」
やっぱり感謝されるって嬉しいことだな。
なんて考えていると、ドアがカチャリと閉まる音がした。


