午前の授業が終わって
チャイムが鳴った瞬間、教室内が一気に騒がしくなる
美奈はカバンからお弁当を出して
自分の机にちょこんと並べた
俺はそれを横目で見ながら
ちょっとだけニヤつく
「今日も手作りか」
「…当たり前でしょ?節約節約」
そう言いながらも
美奈はどこか得意げ
「相変わらず女子力高ぇな」
「べ、別に女子力とか意識してないし...
そういう怜はまたコンビニ?」
自分のコンビニ弁当を机に置いた途端
美奈がクスッと笑った
「相変わらず手抜きだね」
美奈が呆れた顔をして言ってくる
「…作ってくれんなら食ってやるけど?」
わざと軽く冗談めかして言うと
美奈の手がピタッと止まる
「は!?…そ、それは…」
顔がまた赤くなる
“……なんでわたしが”
小さく聞こえる独り言にまた口元が緩む
「でもほら」
美奈はそっと自分の弁当のおかずを箸で摘んで
俺の弁当の上にぽんっと乗せた
「…味見くらいは、ね」
その仕草がたまらなく可愛くて
思わず少しだけ顔を寄せる
「美奈はやっぱ俺に甘いな」
「う、うるさい!」
顔真っ赤にしながら目を逸らす美奈
……ほんと、早く俺のもんにしたい
だけど
今はまだ
この距離感が妙に心地良かった
昼休みのざわめきの中で
そんなことを思いながら、俺は弁当を口に運んだ



