文化祭が終わってから
俺と美奈の距離は

表面上は今まで通り
でも確実に微妙に変わってきてた

 

顔を合わせても
自然と会話が短くなる

 

俺も
美奈も

 

お互いに何かを抱えたまま
何も言えずに日々だけが過ぎていった

 

 

そんなある日の放課後

 

俺は体育館裏の倉庫で
部活の手伝いをしてた

 

片付けが終わり
ふと中庭を通りかかったとき――

 

また あの光景を見てしまった

 

美奈と
あの一年の男

 

 

今回は――
男の方から自然に声をかけてきたらしい

 

「美奈先輩…あの…よかったら、今日このあと…軽くご飯でも…」

 

一瞬
美奈は迷った顔をした

 

 

ほんの一瞬だった

 

でも――

 

「…うん、いいよ。…少しなら」

 

 

その言葉を聞いた瞬間
心臓がドクンと跳ねた

 

“……行くのかよ”

 

 

男は嬉しそうに頭を下げ
二人は並んで歩き出していった

 

 

俺は
遠くの廊下の陰から

それを
ただ、黙って見送るしかなかった

 

 

ポケットの中の拳に力が入る

 

“…なんでだよ”

 

 

――でも
本当は全部わかってる

 

何も言えなかったのは俺だ
引き止めなかったのも俺だ

 

 

苦しい

 

でも それでも
今この足は動かない

 

ただ
遠ざかっていく二人の背中を

胸が焼けるみたいに熱くなりながら
ずっと見送っていた