君がくれた明日




 

 

──その日も、ふと部屋の整理をしていた

 

あの日から時間は経ってるのに
心の整理は追いつかなくて

 

でも

少しずつ、叶愛の荷物を片付けるようにしていた

 

 

引き出しの奥

 

ふと見つけた一冊のノート──

 

あの日、未来ノートだと思っていたそれの、さらに奥

 

もう一枚、折りたたまれた紙が挟まっていた

 

 

そこには、叶愛の丸い字で

 

【ちはやくんへ いつか見せようと思ってた秘密のメモ♡】

 

そう書かれていた

 

 

──手が震えた

 

 

そっと広げる

 

 

 

『ちはやくんへ』

 

 

これは、ただの感謝のメモなの

 

直接言うのは恥ずかしいから
こっそり書きためてたの

 

 

毎日、朝起きた時に「おはよう」って言ってくれるちはやくんが好き

 

帰ってきたとき「ただいま」って笑う顔が好き

 

一緒にご飯食べる時の、幸せそうな表情が好き

 

ソファで私の髪撫でてくれる手が大好き

 

寝る前に「おやすみ」ってキスしてくれるのが好き

 

たまに照れて口ごもるちはやくんが、すっごく可愛い

 

 

何気ない日々が全部、私の宝物です

 

 

ちはやくん

 

出会ってくれてありがとう

 

好きになってくれてありがとう

 

隣にいてくれてありがとう

 

これからもいっぱい思い出作ろうね

 

ずっと、ずっと大好きだよ♡

 

──叶愛より

 

 

 

──事故なんて、どこにも匂わせてない

 

 

これを書いてた時の叶愛は
ただ、幸せな未来を純粋に夢見てただけだった

 

 

だからこそ

 

読んだ今──

 

「……かなえ……」

 

声にならない声が漏れた

 

涙が溢れて止まらなかった

 

頬に落ちた涙が、便箋にじわりと染み込んでいく

 

 

本当は
叶愛も、まだまだこの先を書き足していくはずだったんだ

 

毎日、もっともっと
“ありがとう”が増えていくはずだったんだ

 

でも──

 

それはもう叶わなくなってしまった

 

 

「……幸せだったよ」

 

 

静かにそう呟いて
俺は便箋を胸に抱きしめた

 

 

──きっと、またいつか会えるその日まで

 

お前に、胸張って報告できるように

 

俺は、生きる

 

 

お前の分まで──

 

 

── 完 ──