私は毎年12月にカレンダーを買う。それも、毎年同じ、猫の写真のカレンダー。スマホがあるからカレンダーはあまり必要ないという人もいるけど、私は壁掛けのカレンダーを好んで使用する。

「さーて」

 私は買ってきたカレンダーを開けると、7月まで捲る。そして、7月15日のところに赤ペンで大きくハートマークを書く。その日は恋人の誕生日なのだ。
 私はカレンダーを買うと、こうしてすぐに彼氏の誕生日のところにハートマークを書く。

「今年は何をプレゼントしようかしら?」

 と、その日を見ながらにやにやする。

 彼と付き合って8年。彼とは大学生の時に出会い、彼からの告白により付き合い始めた。そろそろ、彼との結婚も考えている。
 けどある日──

「別れよう」

 いつものカフェに彼と行くと、彼はそう言った。

「え?なんで……?」
「ごめん、他に好きな人ができたんだ。だからその……俺と別れてほしい」
「……その好きな人って誰なの?」
「会社の後輩の子だよ」

 そう言えば最近、やたらとその後輩のことを話していたけど……そういうことだったの?

 その後私は、何度も彼の心を引き留めようとしたけど、彼の心はもうその後輩の子に向いているようで。何を話しても「ごめん」としか言わなかった。

「もういい、分かった。さようなら」

 ばんっ!と、自分のコーヒー代をテーブルに叩きつけるようにして置くと、私は泣きながら店を出た。
 その日一日中、私は泣いた。泣いて泣いて彼のことを忘れようとした。
 けど。

「これ、どうしよう……」

 1月1日に新しいカレンダーを下げ、7月のところを捲る。そこには、元彼となった彼の誕生日のところに大きなハートマークが寂しく書かれていた。
 塗りつぶしたいけど、せっかくの新品のカレンダーを汚すのもイヤだし……
 暫くどうしたものかと考えたが、結局良い案が浮かばず。私はそっと、捲ったカレンダーを戻した。





「ふんふふ~ん♪」

 買い物から帰ってくると、私は買い物鞄からカレンダーを取り出し、袋を開ける。カレンダーをパラパラと捲り7月のところで止めると、15日のところに赤ペンで大きくハートマークを書く。

 元彼と別れて以来、私は元彼と同じ誕生日の人を探して付き合った。別れたらまた、同じ誕生日の人を探す、それを繰り返した。だってそうすれば、カレンダーのハートマークを塗りつぶしたりしなくていいもの。

「今年はどう祝おうかしら?」

 カレンダーを見つめながら、私はにやにやとそう言った。