莉咲(りさ)ちゃん、最近どう? 好きな人とかおらん?」

 朝の教室で、いつものように沙織(さおり)が恋バナを持ち出した。

「えー、全然! そんな暇ないよー」

 私は明るく答えて、手をひらひらと振る。

 クラスの女子たちがキャッキャと笑い声をあげる。

「莉咲ちゃんって、いつも恋愛に興味なさそうだよね」

「そうそう!もったいないよー、可愛いのに」

 周りの反応に合わせて苦笑いを浮かべながら、私は心の中でため息をついた。

(また始まった……)

 どうしてみんな、そんなに恋愛の話が好きなんだろう。

(なんでそんなに簡単に盛り上がれるの?)


 恋愛なんて、所詮は一時的な感情でしょ?

 最初はドキドキして、楽しくて、でも結局は冷めて終わり。

 期待して、失望して、傷ついて。

 そんなの繰り返すくらいなら、最初から期待しない方がマシだと思う。


「でも莉咲ちゃん、もうすぐ明日から転校生が来るんだって! イケメンらしいよ?」

 沙織の声が弾んでいる。

「へぇ、そうなんだ」

 私は適当に相づちを打った。

(転校生がイケメンだからって何?)

 どうして心を動かされなきゃいけないの?