幼なじみに溺れました


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それから数日

教室の空気はどんどん微妙になっていった

女子たちの視線が刺さるようになってきたのはもちろん

廊下を歩いてる時もヒソヒソと声が聞こえるようになってきた

 

「またあの子と話してるよ」

「なんか本気で狙ってんのかな」

「どうせすぐ飽きられるのにね」

 

聞こえないフリを続けるのにも疲れてきた

沙耶と結愛は隣でずっと支えてくれてた

 

「もうさ 無視でいいって」

沙耶が小声で囁く

「気にするだけ損」

 

「うん…」

 

「凪くんのせいだよね 完全に」

「ほんとそれ」

 

凛はため息を吐いた

 

「でもさ」

結愛が少し言いにくそうに口を開いた

「凛もさ…正直 ちょっと気になってるでしょ?」

 

「え?」

 

「いや だってさ ここまで毎日絡まれてさ 普通なら避けるじゃん?」

「でも凛もなんだかんだちゃんと返してるし」

「意識してないわけないと思うんだけど」

 

「……」

 

否定しようと口を開きかけて止まった

自分の中でも整理できなくなってるのはわかっていた

 

ムカつくのに

イラっとするのに

なのに

顔が赤くなる瞬間が何度もあった

 

(いや でも…)

 

心の中がぐちゃぐちゃだった

 

放課後

教室に残ってプリントを整理していると また後ろから声がかかる

 

「まだ残ってんの?」

 

振り返ればもちろん凪だった

 

「プリントまとめてただけだけど」

 

「真面目だな お前」

 

凪は勝手に隣の席に座り 机に肘をついた

 

「最近女子たち うるせーだろ?」

 

「……別に」

 

「無理すんな」

 

「気にしてないから」

 

「ふーん」

 

凪はゆるく笑った

それ以上は何も言わない

ただじっと見てくるだけ

 

「…なに?」

 

「いや 別に」

 

そう言いながらも
視線はまったく外さないままこちらを見てくる

その目がなぜか前よりも真っ直ぐだった

 

「…もう帰るけど」

凛はそそくさと鞄をまとめて立ち上がった

 

「おー」

 

「じゃあな」

 

軽く片手を上げて見送る凪の余裕の顔がまたムカついた

 

なのに
背中を向けた瞬間にまた心臓がドクンと跳ねる

 

(ほんと 何なの…)

 

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