あの頃の恋をもう一度


『おおきくなったら、ゼッタイわたしたちケッコンするの!』



幼なじみの彼と、そんな約束をしたのは5歳の頃だった。

そこから早12年ーー。

彼が私の高校に転校してきた。

彼とは、5歳の頃に向こうの親の都合で北海道へ引越してしまい、そこから一切の連絡をしないまま今に至っている。

ーー気まづい!!

その一言以外に思いつく感情があるとは、今は思えなかった。

お願い、彼と近い席だけは…!



「…響流星(ヒビキ リュウセイ)です。よろしくお願いします…!」

「……じゃあ響の席は…後藤の隣で」



…え?……うそでしょ!?

なんでそんな恋愛漫画みたいな展開になっちゃうのよ…!

苗字だけでまだ私だと気づいていないかもだけど、絶対に顔と名前知ったら幼なじみだって気付くはず……。

もう、こうなったらーー。

私は顔を机に突っ伏した状態にし、彼と顔を合わせないようにした。

それなのに……



「……これからよろしくね。……俺は響流星って言います。……君は?」



……多分というか、絶対に私に対してだと思う……。

なんて答えよう……。

正直、会えたことに関してはとっても嬉しい。

でも、12年間一度も連絡をしていない私なんか忘れられているよね……。

諦めて顔を上げようとした瞬間。

後ろから声がした。



「……後藤明日香(ゴトウ アスカ)」

「え…?」


突然自分の名前を言われ、反射的に顔が上がった。


「…彼女の名前」

「…ちょっとなっちゃん!」



言わないで!と言うようになっちゃんの顔を見た。


「……明日香…?」

「……あ、えっと…その…」

「…本当に明日香なのか……?」

「…………はい…」


……まさか、こんな形でバレちゃうなんて……。


ーーキーンコーンカーンコーン


……はぁ、やっとお昼だ…。

今日はなんだかいつも以上に長く感じた……。

気を取り直して私はなっちゃんとお昼を食べることにした。


「……なっちゃん、早くお昼食べよ……!」

「いいよー」


⟡.· ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ ⟡.·


「…………でさ、彼とは一体どういう関係なの……?」


なっちゃんは購買で買ったパンを食べながら聞いてきた。


「……彼って?」

「転校生くんのことだよ……!」

「……それは………お、幼なじみ…だよ」



ただ関係を言っただけなのに、すごく恥ずかしい…。



「……ああー……明日香の好きぴか」

「…へっ!……ち、違うって」


つい反射的に否定してしまった……。


「……だって幼い頃結婚の約束して、そこからずっとなんでしょ」

「……そ、それは……」


そう。私はあの約束をしてからずっと彼に恋をしているのだ。

なっちゃんには名前は出さなかったけど、幼なじみに恋をしているということだけ伝えてあるのだ。

……でも、12年も経ってる訳だし、さすがに流(リュウ)ちゃんだって覚えてるはずないよね……。

流ちゃんとは、私が幼い頃呼んでいた彼のあだ名だ。

そんなネガティブな事を考えていると、彼の方から私に近づいてきた。


「……明日香」

「……え…な、何?」

「…これ」


そう言って一つの紙切れを渡してきた。

そして、そのまま流ちゃんは教室を出て行ってしまった。



「……何貰ったの?」

「…紙切れ」

「なんか書いてある?」


紙切れの裏を見てみた私は、裏になにか書かれているのを見つけた。


「………"放課後、あの公園で待ってる"…だって」

「……あの公園?」


多分、あの約束をした公園だと思う。

……でも、どうしてこの公園なんか選んだんだろう?

私の頭はハテナマークでいっぱいになったが、とりあえず公園に行ってみることにした。



⟡.· ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ ⟡.·



……ここ…だよね。

時は放課後になり、私は言われたとおり公園にやって来た。

中に入り辺りをキョロキョロと見ていると、 見た事のある制服が目に入った。

……流ちゃん…だよね…?

後ろ姿だけ見えたから、流ちゃんかどうかは確信できなかったけど、とりあえず声をかけてみることにした。


「……あ、あの…」

「……!………明日香…」


私に気づいた流ちゃんは少し驚いていた。


「……なあ、ここの場所って覚えてるか…?」

「……うん。覚えてるよ」



ここは、私と流ちゃんが結婚の約束をした場所だ。

詳しくいうとジャングルジムだけど、形がお城みたいという理由でよく遊ぶときの集合場所となっていたのだ。


「……懐かしい…」

「……だな」


私たちはジャングルジムを見ながら言った。


「……明日香……これ…覚えてるか…?」


そう言ってカバンからなにかを取り出した流ちゃんは私に見せてきた。

これは……押し花で作ったしおり?

そこにはたんぽぽの押し花で作られたしおりがあった。


「……これって…もしかして…」

「……そう、俺たちの結婚指輪」

「…旅立つ前に私が流ちゃんにあげたんだよね……」



このプレゼントがもう12年も経っているだなんて……。

時の流れって早いんだな……。


「……これは俺の宝物なんだ」

「……どうして…?」

「…だって、好きな女の子から貰った初めてのプレゼントだぞ…」


流ちゃんは少し頬を赤らめながら話した。



「……そんなの、誰だって宝物になるに決まってるだろ…」


……なんだか、聞いているこっちも恥ずかしくなってきた…。

私の顔も赤くなり始めたところで流ちゃんは、やっぱり忘れてと言って真っ赤になった顔を後ろに向けた。

しばらくして流ちゃんが話し始めた。


「………なあ、明日香。……俺のことってまだ好き……なのか…?」

「……えっ……そ、それって…」


心臓がバクバクと鳴り始め、うるさくなる。


「…あ、いや……俺の言い方が悪かった」


また頬を赤らめながら彼は言った。


「……好きだ。明日香」