私はアイドルとかには疎いけど、寧々が大ファンだったからこっそりサインとかもらえないかなー…。


「はあ?おまえには関係ないだろう!聡志が来てくれんなら、俺も考えるけどさー」

「悪いけど、今日はこの後雑誌の撮影があるから俺も無理だよ」

「じゃあ光瑠を返して…」

「あ、グラビアアイドル、天王寺由香(てんのうじゆか)

「は、どこ!?」


チャラ男が後ろを向いている隙に、浅野聡志は私を抱えたまま素早く中庭まで走っていった。


「ここまで来れば大丈夫かな。芳明(よしあき)が単純馬鹿でよかったよ」


ニコニコ笑顔でさらりと毒舌を吐く浅野聡志は“爽やか王子様キャラ”とは少し異なっていて、思わず驚いてしまう。


「それにしても光瑠。あのくらいのピンチだったら能力使って逃げ出せたんじゃないの?なんで使わなかったのかな?」

「ふえ!?え、えっと…」


浅野聡志がニコニコの笑顔なまま、私をじっと見つめている。

…これ、もしかしてやばいんじゃ?


「き、今日は調子が悪いんだ!てか、いつまで抱っこしてるんだよ!離せ!」