「何驚いてんだよ？この前は乗り気だったじゃんか」

「い、いや、今日はちょっと調子が悪いっていうか…」


長身の男の子はよく見ると金髪頭に両耳に一つずつピアスを開けていて、見るからにチャラ男といった感じであった。

私の学校にはいないような珍しいタイプ。


「なんだよ？逃げようたってそうはいかないぜぇー。とりあえず行こ行こ。女の子たち待たせてんだよ」

「え、あ、ちょ…っ」


チャラ男は私の言うことなんて聞く耳も持たず、ズルズルと無理矢理引っ張ってくる。


うわーん、どうしよう！誰か、助けて！

そう思った時だった。

突然ふわりと体を持ち上げられ、チャラ男の手から逃れることに成功をする。


「ん？あ、おい！聡志(そうし)！光瑠を返せ」

「光瑠ちゃん嫌がってんじゃん？まるで女の子みたいに可愛く」


ね？とにこりと爽やかな笑みを向けてきたのは、今をときめく五人組人気アイドルのボーカル、浅野(あさの)聡志だった。

たしか“耳”の能力を持っている浅野聡志は一度聴いた音はなんでも覚えてしまうといった天才で、どんな歌声が人々の耳に心地よく届くかもわかるため突如アイドルとして現れたかと思うと一瞬にして人気を上げていった。

特に、サラサラの色素が薄い髪、爽やかで甘い笑顔というルックスの面でも若い女子からの絶大な人気を集めているのだ。


この学校に通っていることは入学した頃に光瑠から教えてもらっていたけど、まさか早速拝めるなんて。