「ごめんごめん。能力を隠さなくなってから、強い思いとかがあるとつい無意識に出ちゃう時があって。光莉は昔から勘が冴えてるだろ？俺の学校に一ヶ月潜伏して、代わりにテストでいい点数を取って退学免除！をしてほしいわけですよ」

「はあ？そんなの自分で死ぬ気で勉強しなよ！」

「できないからこうして外出許可までもらって家に帰ってきたんだろ？大丈夫、俺と光莉は似てるからバレやしない。頼む！これからの俺の学校生活がかかってるんだ。一ヶ月の間だけ！夏休みだし光莉には極力迷惑はかかんないはずだから！」


土下座をする勢いで跪きながら、両手を合わせてきた光瑠に小さくため息をつく。

光瑠が特別な能力を使おうが使わないが、私は結局光瑠のお願いを聞いてしまうのだ。

それはこの世界でたった一人のお兄ちゃんだから。

離れていても歳を重ねても光瑠のことが大好きだからだ。


「まあ…悪い予感はしないし、今回だけだからね？その一ヶ月で死ぬほど勉強してせめて追いつく努力はしなよ。じゃないと本当に知らないんだから」

「うわー！光莉様！最愛の妹よ！もちろんだ！俺、勉強頑張るから！」


ぎゅーと力強く抱きしめてくる光瑠に苦笑いをしながら「はいはい」と返す。


不思議と、これから先の悪い予感は感じない。

むしろワクワクするような、ドキドキするような、少しだけ楽しい出逢いが待っているようなそんな予感がした。