と返事をしたところで、やっと体が動いた。


「ちょっと…!どういうこと!?私に能力は使うなって何度も言ってるでしょ!てかなんで家にいるの!?一ヶ月間入れ替われってどういうこと!?」


一息で言いたいことを言い切り、肩で大きく呼吸をしながら光瑠をきっと睨みつける。


光瑠には“口”の能力がある。

目を瞑ってでも何を食べているかわかったり誰もわからないような隠し味を一発で当ててみせたり、それだけだったらまだすごいで終わるかもしれないけど、光瑠の場合は特別。

光瑠の言葉を聞いたら絶対に従ってしまうほどの強い力を持っているのだ。


光瑠は馬鹿で明るくて優しいから、この力に気づいてからは悪いことには使わないけどうまく力をコントロールしながら利用していた。

光瑠の能力はどの病院に行っても原因はわからず、調べていくうちに光瑠のような特別な能力を持つ人がこの世界には何人も存在することがわかった。

そしてそんなすごい能力を持っているけど周りからは気味悪がられたり敬遠されたりするような人たちが行く私立の学校まであると知った。

光瑠は自分の力でその学校の情報を見つけてくると、両親に頭を下げて中学はここに通わせてほしいとお願いをしたのだ。

普段は明るくなんてことのないように振る舞っている光瑠だけど、心のどこかでは自分はおかしいのだとそう思って苦しんでいたのかもしれない。

とにかく、光瑠はその学校に入ってからは毎日楽しそうで、全寮制だったから長期休みの時くらいしか顔を合わせることはなかったけどそれでも光瑠が生き生きとしていることが私は嬉しかった。

それなのに、久しぶりに帰ってきたかと思ったらいきなり家族の私に能力を使ってくるなんて…!