何かが起きる、そんな予感…。


「ただいまー」

「光莉!よく帰ってきたな、我が妹よ!」


まるで待ち構えていたかのように双子の兄、光瑠(ひかる)がにっと笑いながら仁王立ちして立っていた。

光瑠は私の生き写しかのように、髪の長さ以外顔や性格、全てが瓜二つ。

性別が同じだったらきっとどっちがどっちかわからなくなっていただろう。

焦茶色のセンター分けの髪型に、小さな顔にはくりっとしたぱっちり二重を始めとした整ったパーツが揃っていて、妹の私から見ても光瑠はかなりのイケメンの分類だと思う。

そんな光瑠とは小学生までは同じ学校だったけど、中学生になってから学校は別々になってしまった。

なぜかと言うと、光瑠は“特別な能力”を持っているから。


「“お願いがあるんだけど”」


ぴくっと思わず体が勝手に反応する。

耳を塞がないととわかっているのに、光瑠の声だけで体が一瞬にして硬直する。


「実は中二になってから勉強に全然ついていけなくてさー。この前あった中間試験でも赤点取りまくって一ヶ月間の補習&毎日の小テストで八割以上を取らないと退学って言われてさ。もうすぐ夏休みが始まるだろ?だから、“夏休みの間俺と入れ替わってほしいんだ”」

「…うん、わかった」