夢丘も悩んでいた。
 日本一高いビルの最上階で腕を振るうことができるチャンスがきたのに、スタイリスト10名とアシスタント5名を採用する方法がまったくわからないのだ。
 もちろん、誰でもいいのならリクルート誌で募集をかけて、かき集めることはできるだろう。
 でも、超高級美容サロンと標榜(ひょうぼう)する限りは、トップクラスの腕を持つ人材を採用しなければならない。
 評判を落とすようなレベルの人を雇うわけにはいかないのだ。
 ただ1人思い浮かぶのは、この前まで勤めていた店の店長だが、責任を持つ重要な人物を引き抜くわけにはいかない。
 それは、お世話になった店に後ろ足で砂をかけるようなものだからだ。

 といって……、

 いつもそこで思考が止まってしまう。
 伝手も人脈もない夢丘に新たな考えが浮かぶことはなかった。