なんだこの湧き上がってきた疑念は? 待て待て俺、何か気づいちゃったの? シノブの話でどこかおかしいところとかを。
やめろよお前、なんか気付いちゃ駄目なんだよそこは、わからないがたぶん、ぜったいに触れない方がいいって……でもちょっと整理してみよう。俺の苦手な整理整頓。部屋の掃除とか一年に一回やるかどうか、だから俺の心はいつも錯乱していてさ。部屋の乱れは心の乱れだ。
では始めます、まず認めてやるがシノブは王子が、好き。うん、許可(仮)してやる。王子はそれに気づかない振りをしているか好きではない。殴らない紳士な俺に感謝するように。
その王子は悪の王妃候補者から害されようとしており、それをシノブは阻止しようと呪われた身ながら健気にも頑張っている。これによってこれを見るに……これを見て思うに……もしもだもし……その悪女を退治した暁には、俺はシノブを嫁に出来て……それは、違うな、うん、明らかになんかおかしい。
論理的に繋がってはいない。この論理的思考をまるで有していない俺にだってすぐに分かる没論理性。なぜ王子の悪の嫁を倒したら俺とシノブが結ばれるのだ? 結ばれないだろ、そんな馬鹿な。説明を要するところだ。
普通こういう時は結婚エンドであり例えばお姫様と勇者が結ばれる。だが俺と王子を結ばれることはない。俺は同性愛者ではないし王子も恐らくは違うだろう。もしも俺が王子に迫られたら俺は一向に構わんと条件反射的に言ってしまいそうだがそこは置いておこう。よってこのエンドは、無い。
ということは……えっ? ということは……この場合は王子とシノブが結ばれる……つまりこの旅ってシノブが王子と結ばれるためのものであって……落ち着け俺。それは違うよ全然違う。そういうのはほら、勇者一人旅の場合だよ。パートナーがいない特殊な場合のみだ。普通のシリーズなら勇者は異性の仲間と同行し旅をしているだろ? その女の子は当然のことながら勇者のことを言葉にはしないが愛している。
それなのに勇者がその仲間の愛を捨ててお姫様と結ばれるなんて有り得ない。だいたいお前は正義の味方なのに、そんな不道徳なことをしていいと思っているのか? 苦難を共にしてきた彼女の心を何だと思ってんだ! そんなのは俺が、この救世主が許さない。さすがにそんな変なことをするお話は見たことがない。
お姫様とはお友達で仲良しではあっても結局は仲間と結ばれる。これが普通なんだ普通。男ならまずそうするはずで……あれ? ひょっとして女は違うのかな? 一緒に旅して苦難を共にした仲間よりも王子様の方が良いとか? 王妃になれるのなら仲間の男を捨てても良いとか? 幸せになるのなら俺のことを捨てても良いとか? いつものことを俺にしてくるのかな? これまで出会ったすべての女が俺にしてきたことを。
そんなの……あってはならない。こんなことは許されない。この俺がこの身を賭してでも阻止をする! そうじゃないそうじゃない、いまは決意表明をするところではなく、考え方を変えよう。あのさっきの違和感をここで用いよ。それが大切なはずだ。
シノブによれば例のあれは悪の王妃だが、それはシノブの目から見たからであって、嫉妬心から当然良くは見えていないだろう。よってそうなるとこれはシノブが王妃になりたいがための……?
「どうしたのアカイ?」
不審そうな目で見つめてきたシノブが徐々に遠ざかって行くような感覚に襲われた。遠くに二度と届かないところに行ってしまうような意識の離れかた。自分はなにか取り返しのつかないことを手伝ってしまっているのではないのか?
同時に起こった二つの異なる妄想。その二つのどちらかだとしたら、俺はいったいなにをしているというのだ? どっちも俺を幸せになど絶対にさせない道。それどころか俺が奈落の底へと蹴落とされる不幸な道。
そこに俺は……遠のく意識のなか次第にシノブがますます小さくなっていく。俺はこのまま死ぬのだろうか? 自らの妄想にショック死をしたらシノブは一人となる。シノブは俺抜きでその目的のために戦うのだろうか? 戦うのだろう。
そして闘い敗れたくノ一の運命はお約束のあれ……そんなこと俺が許さん! 俺の心は熱くなりシノブが大きくなる。あるいは俺がいなくなったことで戦うのをやめて里に帰る。するとスレイヤーとカオルさんがシノブをどこかの男の家に放り込みそこで子作りさせられて……二つのことを考えた途端に俺はシノブの手を握った。
「シノブ! すまない!」
「えっ?」
俺が間違えているのかもしれないだけだ。そうだ俺は間違えている。いつも間違えている。だから今度こそ間違えない。驚いたままのシノブに向かって俺は告げる。
「俺は間違えていた!」
「なっなにを間違えていたの」
「疑ってごめん! 俺はてっきり君が王妃になりたいがために王妃候補者を悪女と見立てたり、もともと君は王妃になりたかったと思い込んだりしちゃってさ」
シノブは瞼を瞬かせた。
やめろよお前、なんか気付いちゃ駄目なんだよそこは、わからないがたぶん、ぜったいに触れない方がいいって……でもちょっと整理してみよう。俺の苦手な整理整頓。部屋の掃除とか一年に一回やるかどうか、だから俺の心はいつも錯乱していてさ。部屋の乱れは心の乱れだ。
では始めます、まず認めてやるがシノブは王子が、好き。うん、許可(仮)してやる。王子はそれに気づかない振りをしているか好きではない。殴らない紳士な俺に感謝するように。
その王子は悪の王妃候補者から害されようとしており、それをシノブは阻止しようと呪われた身ながら健気にも頑張っている。これによってこれを見るに……これを見て思うに……もしもだもし……その悪女を退治した暁には、俺はシノブを嫁に出来て……それは、違うな、うん、明らかになんかおかしい。
論理的に繋がってはいない。この論理的思考をまるで有していない俺にだってすぐに分かる没論理性。なぜ王子の悪の嫁を倒したら俺とシノブが結ばれるのだ? 結ばれないだろ、そんな馬鹿な。説明を要するところだ。
普通こういう時は結婚エンドであり例えばお姫様と勇者が結ばれる。だが俺と王子を結ばれることはない。俺は同性愛者ではないし王子も恐らくは違うだろう。もしも俺が王子に迫られたら俺は一向に構わんと条件反射的に言ってしまいそうだがそこは置いておこう。よってこのエンドは、無い。
ということは……えっ? ということは……この場合は王子とシノブが結ばれる……つまりこの旅ってシノブが王子と結ばれるためのものであって……落ち着け俺。それは違うよ全然違う。そういうのはほら、勇者一人旅の場合だよ。パートナーがいない特殊な場合のみだ。普通のシリーズなら勇者は異性の仲間と同行し旅をしているだろ? その女の子は当然のことながら勇者のことを言葉にはしないが愛している。
それなのに勇者がその仲間の愛を捨ててお姫様と結ばれるなんて有り得ない。だいたいお前は正義の味方なのに、そんな不道徳なことをしていいと思っているのか? 苦難を共にしてきた彼女の心を何だと思ってんだ! そんなのは俺が、この救世主が許さない。さすがにそんな変なことをするお話は見たことがない。
お姫様とはお友達で仲良しではあっても結局は仲間と結ばれる。これが普通なんだ普通。男ならまずそうするはずで……あれ? ひょっとして女は違うのかな? 一緒に旅して苦難を共にした仲間よりも王子様の方が良いとか? 王妃になれるのなら仲間の男を捨てても良いとか? 幸せになるのなら俺のことを捨てても良いとか? いつものことを俺にしてくるのかな? これまで出会ったすべての女が俺にしてきたことを。
そんなの……あってはならない。こんなことは許されない。この俺がこの身を賭してでも阻止をする! そうじゃないそうじゃない、いまは決意表明をするところではなく、考え方を変えよう。あのさっきの違和感をここで用いよ。それが大切なはずだ。
シノブによれば例のあれは悪の王妃だが、それはシノブの目から見たからであって、嫉妬心から当然良くは見えていないだろう。よってそうなるとこれはシノブが王妃になりたいがための……?
「どうしたのアカイ?」
不審そうな目で見つめてきたシノブが徐々に遠ざかって行くような感覚に襲われた。遠くに二度と届かないところに行ってしまうような意識の離れかた。自分はなにか取り返しのつかないことを手伝ってしまっているのではないのか?
同時に起こった二つの異なる妄想。その二つのどちらかだとしたら、俺はいったいなにをしているというのだ? どっちも俺を幸せになど絶対にさせない道。それどころか俺が奈落の底へと蹴落とされる不幸な道。
そこに俺は……遠のく意識のなか次第にシノブがますます小さくなっていく。俺はこのまま死ぬのだろうか? 自らの妄想にショック死をしたらシノブは一人となる。シノブは俺抜きでその目的のために戦うのだろうか? 戦うのだろう。
そして闘い敗れたくノ一の運命はお約束のあれ……そんなこと俺が許さん! 俺の心は熱くなりシノブが大きくなる。あるいは俺がいなくなったことで戦うのをやめて里に帰る。するとスレイヤーとカオルさんがシノブをどこかの男の家に放り込みそこで子作りさせられて……二つのことを考えた途端に俺はシノブの手を握った。
「シノブ! すまない!」
「えっ?」
俺が間違えているのかもしれないだけだ。そうだ俺は間違えている。いつも間違えている。だから今度こそ間違えない。驚いたままのシノブに向かって俺は告げる。
「俺は間違えていた!」
「なっなにを間違えていたの」
「疑ってごめん! 俺はてっきり君が王妃になりたいがために王妃候補者を悪女と見立てたり、もともと君は王妃になりたかったと思い込んだりしちゃってさ」
シノブは瞼を瞬かせた。


