予想以上のシノブからの詰問に驚きながらも俺は満足感を得ていた。やっぱりこの女は俺に惚れ始めているな、と。感じるんだ、言葉はきつめだがそこには確かに俺に対する怒りがある。
無視とか無関心ではもはや済ませられない本物の心がここにはある。そうだともシノブは俺が他の女に関心を抱いたことが気に喰わないのだ。それでいいのだ、気に入らないでくれ。もっと嫌がってくれ。
「いやいやすまない。あまりにもカオルさんが綺麗でね」
「すまないじゃないわよ。正直ちょっと信じられないよね。あんなに言ったのに約束を破るなんて、反省しなさいよ」
「ごめんごめん。うん、反省するよ」
謝っているのに気持ちが良い! そうだシノブは俺のことを信じてくれたのだ。約束をちゃんと護ると信頼してくれたのだ。それなのに俺ってやつは最低だ……本当に最低だ……あっなんかまた気持ち良くなったきた。自分を憐れむのもたまにはいいものだ。懐かしささえ感じる自涜感。しかし罪悪感もまた味なのである。
旨いのである。というか罪悪感すら得られなくなったことこそが汚れて惨めな大人感すらある。恥知らずというか罪知らずというやつで。俺も遂に女に愛されている実感を得ることができていると焼き餅を通じて感じることができた。
思えば……いっつも思ってばかりだが、思わせてくれ。この年になると追憶に耽りたくなるのだから感傷、この年になると思わずにはいられなくなるんだよ。高校時代のカップルの喧嘩は、羨ましかった。眩しかった。妬ましかった。そのまま別れて欲しかった。その二人が分かれたとて女の子が俺の方に来るわけがないのでこんなの無意味な願いなのだが、それでも別れて欲しいものなのだ。
あぉ女の子に怒られるほどに深く思われたかった。愛されたり怒られたりされたかった。好意に裏打ちされた感情を与えて貰いたかった。俺に向けられるのはそれとは違う愛の裏打ちのない侮蔑的な乾いた怒りであり恐怖であり愛とは無縁な無関心。逃走であり突き放しであり攻撃であり、そこに残るのは空しさと悔しさだけ。これしかなかった。
または呆れられ無視され視線外に置かれ……俺は女の感情を良い方向に動かすことが今までできなかった。ずっとできなかった。それがどうだ! いま俺はこんなにも動かせているじゃないか! もっと俺を責めてくれ。もっともっと構ってくれ。
「カオルさんのおっぱいは大きかったな」
「ハァ? 何が言いたいの?」
良しかかったなと俺はシノブの反応に満足した。
「でもシノブは気にしなくていいからね」
「なんなの? 気持ち悪いなぁ」
怒っている。そう気にしているであろう点を指摘してそしてフォローを入れて安心させるという一石二鳥の作戦。きっとシノブは内心でホッとしているだろう。俺がカオルのおっぱいに魅了されたという不快感と不安感。その二点を俺の一言で解消させられた。しかもこうも言えばなお満点だ。
「俺はそっちの方が好きだから」
「馬鹿なのかな?」
「うん、馬鹿だよ」
「フンッ分かってる」
ほら笑った。よし完璧と俺は気分を高揚させた。その思い違いの大空へと意識を飛ばした。まるで俺たち二人は恋人同士の会話みたいではないかと。
「反省していないように見えないんだけど」
「いやいや反省しているよ」
そう反省はしているが楽しくて笑顔になっているのである。ニヤニヤとだらしくなく、カオルが背中に引っ付いていた時と同じような笑顔で。
「全然そうは見えないよ。反省しているのならもう二度とそういうことをしないと約束して」
「ええなんで?」
分かっているが、敢えて聞く。俺はそこまで察しの悪い男ではない。鈍感男ではない。なんとなく勘が良い方の男だ、たぶん。女からそういうことを言われた記憶はないが、いつもいつの間にかいきなりフラれているがそれでも悪い方ではないと思う。とりあえず他の馬鹿な男とは違う、これだけは自信を持って言える。
これはもう少しシノブの心を確かめたいという意図があってわざと聞いたのだ。まぁこの会話のその全てがその意図から出ていることではあるがもうちょっとだけ付き合ってもらいたい。大丈夫だシノブ。俺はもともと浮気をするつもりなどはないのだ。カオルぐらいの事故がない限りはそうにはならない。
だからこちらも罪悪感をあまり抱かずにこういった悪意に満ちたことができる。償いは必ずとるから安心してくれ。不安だろうがそのまま俺に、嫉妬の炎を向けてくれ。
「なんでってわからないの? あなたが他の女に構っているのを見たり褒めたりしているのを聞くと私はなんか、嫌なの」
なんか、嫌なの! その言葉は俺の心臓と脳を強打する。痛みが走るも辛うじて俺は意識を保った。いや痛みは、ない。それどころか……快感だ。たくさんの女から向けられたたくさんの『嫌』とは違うなにか。どういうことだ? 同じ言葉なのにどうして衝撃が異なる。もしやこれは俺のことが好きって、意味? エロ漫画的に考えて!
無視とか無関心ではもはや済ませられない本物の心がここにはある。そうだともシノブは俺が他の女に関心を抱いたことが気に喰わないのだ。それでいいのだ、気に入らないでくれ。もっと嫌がってくれ。
「いやいやすまない。あまりにもカオルさんが綺麗でね」
「すまないじゃないわよ。正直ちょっと信じられないよね。あんなに言ったのに約束を破るなんて、反省しなさいよ」
「ごめんごめん。うん、反省するよ」
謝っているのに気持ちが良い! そうだシノブは俺のことを信じてくれたのだ。約束をちゃんと護ると信頼してくれたのだ。それなのに俺ってやつは最低だ……本当に最低だ……あっなんかまた気持ち良くなったきた。自分を憐れむのもたまにはいいものだ。懐かしささえ感じる自涜感。しかし罪悪感もまた味なのである。
旨いのである。というか罪悪感すら得られなくなったことこそが汚れて惨めな大人感すらある。恥知らずというか罪知らずというやつで。俺も遂に女に愛されている実感を得ることができていると焼き餅を通じて感じることができた。
思えば……いっつも思ってばかりだが、思わせてくれ。この年になると追憶に耽りたくなるのだから感傷、この年になると思わずにはいられなくなるんだよ。高校時代のカップルの喧嘩は、羨ましかった。眩しかった。妬ましかった。そのまま別れて欲しかった。その二人が分かれたとて女の子が俺の方に来るわけがないのでこんなの無意味な願いなのだが、それでも別れて欲しいものなのだ。
あぉ女の子に怒られるほどに深く思われたかった。愛されたり怒られたりされたかった。好意に裏打ちされた感情を与えて貰いたかった。俺に向けられるのはそれとは違う愛の裏打ちのない侮蔑的な乾いた怒りであり恐怖であり愛とは無縁な無関心。逃走であり突き放しであり攻撃であり、そこに残るのは空しさと悔しさだけ。これしかなかった。
または呆れられ無視され視線外に置かれ……俺は女の感情を良い方向に動かすことが今までできなかった。ずっとできなかった。それがどうだ! いま俺はこんなにも動かせているじゃないか! もっと俺を責めてくれ。もっともっと構ってくれ。
「カオルさんのおっぱいは大きかったな」
「ハァ? 何が言いたいの?」
良しかかったなと俺はシノブの反応に満足した。
「でもシノブは気にしなくていいからね」
「なんなの? 気持ち悪いなぁ」
怒っている。そう気にしているであろう点を指摘してそしてフォローを入れて安心させるという一石二鳥の作戦。きっとシノブは内心でホッとしているだろう。俺がカオルのおっぱいに魅了されたという不快感と不安感。その二点を俺の一言で解消させられた。しかもこうも言えばなお満点だ。
「俺はそっちの方が好きだから」
「馬鹿なのかな?」
「うん、馬鹿だよ」
「フンッ分かってる」
ほら笑った。よし完璧と俺は気分を高揚させた。その思い違いの大空へと意識を飛ばした。まるで俺たち二人は恋人同士の会話みたいではないかと。
「反省していないように見えないんだけど」
「いやいや反省しているよ」
そう反省はしているが楽しくて笑顔になっているのである。ニヤニヤとだらしくなく、カオルが背中に引っ付いていた時と同じような笑顔で。
「全然そうは見えないよ。反省しているのならもう二度とそういうことをしないと約束して」
「ええなんで?」
分かっているが、敢えて聞く。俺はそこまで察しの悪い男ではない。鈍感男ではない。なんとなく勘が良い方の男だ、たぶん。女からそういうことを言われた記憶はないが、いつもいつの間にかいきなりフラれているがそれでも悪い方ではないと思う。とりあえず他の馬鹿な男とは違う、これだけは自信を持って言える。
これはもう少しシノブの心を確かめたいという意図があってわざと聞いたのだ。まぁこの会話のその全てがその意図から出ていることではあるがもうちょっとだけ付き合ってもらいたい。大丈夫だシノブ。俺はもともと浮気をするつもりなどはないのだ。カオルぐらいの事故がない限りはそうにはならない。
だからこちらも罪悪感をあまり抱かずにこういった悪意に満ちたことができる。償いは必ずとるから安心してくれ。不安だろうがそのまま俺に、嫉妬の炎を向けてくれ。
「なんでってわからないの? あなたが他の女に構っているのを見たり褒めたりしているのを聞くと私はなんか、嫌なの」
なんか、嫌なの! その言葉は俺の心臓と脳を強打する。痛みが走るも辛うじて俺は意識を保った。いや痛みは、ない。それどころか……快感だ。たくさんの女から向けられたたくさんの『嫌』とは違うなにか。どういうことだ? 同じ言葉なのにどうして衝撃が異なる。もしやこれは俺のことが好きって、意味? エロ漫画的に考えて!


