全部は聞こえなかった

だから紫音先輩の恋がなんなのかという答えは分からないし、この質問で瑠美先輩が何を思ったのかも分からない

だけど唯一わかったことは

(瑠美先輩はやっぱりりょーくんの事…)

私の尊敬する先輩は私の幼なじみが好きだって事

つまり、私がするべき選択は2人の恋路の邪魔をしないようにすること

だから、私はもう、りょーくんとはただのクラスメイト兼同じ部活の仲間でしかない

幼なじみでもなんでもない

そう決意して

1人降りていく瑠美先輩を見送って

「いるのはわかってるぞ、赤嶺」

「なんでこっそり降りてこうと思ったのに…紫音先輩のばーか」

「ああ、私は馬鹿だ、悪いか?」

こっそり1人で降りてこうと思ったら紫音先輩に見付かったからちょっと不貞腐れてみる

「まあ、あいつは気が付いてないだろうし、どこまで聞いてたか知らねえけどな、お前は何も気にしなくていいからな」

でも、私には先輩の言葉は

まるで届いていなかった