ー Front and back ー


「って、話してたら来たよ。鳳くん!」


っ!?


「え、あ本当だ.....!」


今の会話聞かれてないよね.....?


「てかさ。隣、どんな感じ?」


「えっ」


本人が来たからもうレンくんのことは話さないのかと思いきや.....まだ話すのか。


「どうって.....別に何も」


「えー。例えばほら.....雰囲気とか、声が良いとか.....ってそうだ、学校案内もしたんでしょ?」


「う、うん。あ、ほら本人来たから。聞こえちゃうよ.....!」


もうこれ以上は話させないようにしないと。


つい本当のことを言ってしまいそうで怖い。.....私って嘘つくの下手だからなぁ。


私は心の中でそう誓ったのであった。


****


昼休み。


いつも通り美穂とお弁当を食べようと思っていた時、背後から低く聞き慣れた声が聞こえた。


「.....柊」


後ろを振り返るとそこにはレンくんが立っていた。


っ!!


「えっ!?.....あ、な、なんでしょうか」


もう心臓に悪いよぉ.....


「.....ちょっと話があるから来い」


やば、動揺しすぎたら美穂に怪しまれちゃう。


っていうか、話って.....?


「結花、ぼーっとしないで行ってきたら.....?」


「え、あ、うん.....!」


ドキドキ。


私はレンくんについて行き、着いた場所は.....誰もいない多目的室だった。


何だろう.....まさか怒られるとか?いやでも何もしてないし。


あ、誰かに言ってないか確認とかかも!.....と思っていた時、ずっと無言だったレンくんが口を開いた。


「柊」


「っはい」


二人っきりということは初めてじゃないが、緊張で声が裏返る。


彼は、昨日とは違い真剣な表情をしていた。


だが、彼の口から出たのは―――


「俺の婚約者になってくれないか」


予想外の言葉だった。