ー Front and back ー

「お前.....そういうことか」


レンくんは、バツが悪そうに言った。


.....おわった。


「.....チッ、なんで分かんだよ」


ギロリと睨んできた。


レンくんの鋭い目線に、私は何も言えなくなってしまった。


「もうバレたからにはどうしようも出来ねぇ.....」


.....ていうかレンくん、こんな口悪かったっけ.....?


「お前、絶対に誰にも言うなよ?」


裏のレンくんはこうなのかな。


「おい.....聞いてんのか?」


まあ、口悪いレンくんも結構良いかも。


「おい.....!柊、聞いてんのか!!」


「え.....あ、すみません!」


やばい、ぼーっとしてた.....


「絶対に、誰にも言うなよ?」


「も、もちろん.....誰にも言いません」


いや、てか今名前呼んでくれてたよね.....?


覚えてくれたんだ.....嬉しい。へへっ。


「幸いお前以外に気付いている奴は居なさそうだな.....あとお前.....その敬語なんか気分悪いからやめろ」


「.....はい?」


.....ん?


「敬語はやめろっつってんだよ」


「え!?そ、そんな.....推しに敬語を使わないなんて.....」


「は.....お前今の状況で推しとか言ってんの?」


「え?」


「この俺を見て、幻滅するだろ。普通」


幻滅.....?


「.....何で?だってレンくんはレンくんだもん。するわけないじゃん」


「.....え」


私がそう言うと、レンくんは驚いた表情で聞いてきた。


「まじで?.....俺、過去にも何回がバレたことあるんだよ.....ファンに。でも、だいたいの奴はさ、この俺を見て幻滅するんだよ」


「嘘、でしょ.....」


「.....やっぱり幻滅したか?」


レンくんは、捨てられた子犬のような目で見てきた。


うぅ、なんだその胸にキュンとくるような顔は。


「幻滅するわけないでしょ.....逆に、嫌になる方が分からない」


「.....は」


「口悪いレンくんもかっこいいし。めちゃくちゃギャップ萌え.....」


もう破壊力やばい.....


「嘘だろ.....」


レンくんは独り言のように呟いた。


「.....?嘘じゃないよ?」


レンくんはどこを見てるかわからないような目で、何かをブツブツと呟いている。