危険なのは、好青年自身が分かっていたこと。
山口県と岡山県と、遠く離れた場所で、しかも夜中に倒れても、好青年を知る人が居なければ、助けられる人は居ない。
私も事情を知らないから、岡山の病院に付き添っても、好青年自身が話せなかったら、助けようがない。
そんな命懸けで会いに来てくれていたなんて。
「ここには、よく来ていたみたいなんです。良い秘密基地見つけたって話してくれたことがあって。でもある日、秘密基地から帰って来た時、目をこれまでにないくらいキラキラさせて、結婚したいって言い出して」
「結婚?」
「多分あなたに会った日だと思います。病気を治して、あの子と結婚するんだって…。でも日に日に弱っていって、俺も見てて苦しくて」
末期のガンなんて、そう打ち勝てるものでもない。
死を間近に感じる、手強い敵。
病気を隠してここに来るほど、好青年にとっても思い出深く、私のために会いに来てくれる、特別な場所だったんだ。
「でも、本当に幸せそうでした。俺に話してくれたことは、ほんの一部だとは思いますけど、兄はあなたに会えて心から喜んでました。体中痛いはずなのに、あなたに会いに行けるって決まると、痛み止めの量が減るんですよ。病気に勝ったんじゃないかって勘違いするくらい…。このまま勘違いなら良いんですけどね」
弟もついに泣き始めてしまい、借りていたハンカチを返すと、〝差し上げます。使ってください〟と受け取ってもらえなかった。



