車輪止めに座ったり、柵にもたれかかってみたり。
何時間ほど待っただろうか。
そろそろ、諦めた方が良いかな。
「…こんばんは」
背後から遠慮がちに挨拶が聞こえてきて、振り返ろうとして体が固まった。
…好青年と同じ声だけど、好青年じゃない。
もっと軽い口調で、〝よっ!〟なんて言ってくる人。
出会った時の挨拶と変わらないから、きっと別人。
「こんばん、は…。あの、」
「やっぱりあなただ。俺の兄と、ここで会ってましたよね?」
声も変わらなかったけど、顔も一緒。
完全に好青年と一致していた。
ただ、声色は大人しく、好青年より引っ込み思案のように思える。
好青年には兄弟がいたんだ。
「良かった。ここで自転車と一緒に居ると思うって言われて来たんです」
「お兄さんに言われて…。なぜ弟さんが来るの?」
「それは…。事情がありまして」
双子のような弟から封筒を一つ渡されて、その先は何も言わずに私の後ろにある景色に目をやった。
〝名前も知らないあなたへ〟
封筒の表には、歪な文字でそう書いてあり、裏返すと宛名は白紙だった。
やっぱり名前、教えてもらえないか。



