「じゃあ君は、悪いお姫様だ」
「あなたも。悪い王子様」
そう言って差し出された右手に自分の右手を重ね、左足を少し後ろに引いてお辞儀をする。
「では、地獄行きの馬車へお乗りください」
「それは乗りたくないな(笑)」
ひとしきりの冗談も終えて、何をやってるんだと笑って車に乗った。
助手席に座ると、すぐに好青年も運転席に座り、エンジンをかける。
「眠くない?運転代われないけど、眠かったらどこかに停めて寝てね」
「お気遣いありがとうございます、お姫様」
「もうそれ良いから(笑)」
私の自転車も積んで、車は広島経由山口行きで動き出した。
夜中に何時間も話したはずなのに車の中でも話は弾み、昔の恋愛話に。
「私は二人付き合ったことあるけど、二人とも良い人だった。冗談が通じない人たちだったけど」
「じゃあさっきみたいなことやっても、全然盛り上がらないんじゃない?」
「シンデレラの件(くだり)?」
「そうそう。良い意味で真面目すぎない方が、通じるよね」
「あなたは真面目じゃないってことね」
「それは語弊があるな」
時々堅苦しいなと思うこともあったから、次誰かと付き合うことになるなら、冗談が分かる人が良いなと思う。
この好青年みたいに。



