名前も知らない貴方とだから恋に落ちたい






「飲んじゃっても良いですか?」


「はい」


「ありがと」





視線を好青年から工場の方へ移した時、頻繁に来ていたはずなのに、久しぶりに見た気がした。



この場所だけ、不自然に輝く夜景。




目的が、いつからか夜景から好青年に変わっていた。



この夜景を見ると、心が洗われる。


その夜景を見る好青年を見ると、心が締め付けられる。




締め付けられるのは、好きだから?朝が来たらまた会えなくなるから寂しくて?


また必死に探して、会えない寂しさを重ねて背負うのは辛い。




頭の中だけで繰り広げる独り言を消そうと、キンキンに冷えた水を喉に通すと、思った以上に冷たくて、咽せた。





「大丈夫?」


「冷たくて、咽せました」





ここに居て、この好青年と居ると、何もかも忘れられて幸せ。


そう思ってみたい。




名前も知って、電話番号も交換して、いつでも電話ができる。


優しく背中を撫でてくれている、この手に縋ってみたい。





好青年はどう思うだろう。またしばらく姿を見せなくなるのか、ずっと会えなくなるのか。




こんなことを考えてモヤモヤ過ごすなら、このままが良い。