あれから私たちは、1か月の空白を埋めるように

いろんなとこへ出かけ、思い出を残すように写真を撮ったり、

冗談を言い合っては笑い合い、不安になれば
互いの気持ちを確かめ合って、幸せな時間が流れていった


...あの時までは






「はぁぁ」
学校が終わり、家でまったりしていた

"暇だなぁ...アオ、何してるかな?"

そう思いながら携帯を見るが、
夕方から返事がないままだった



「んーーもお。バカアオ...っよし!
ダンの散歩でも行くか!」


愛犬を連れて、わたしは家を後にした


静かすぎる住宅街

わたしは大好きな音楽を聴きながら、
街灯が照らす道をひたすら歩き続ける


交差点まで来て、わたしはダンと一緒に信号待ちをしていた



視線の先に、目に止まる男女の姿が飛びこんできた

「...ん?...ア...オ?」




心臓が大きく鼓動を打ち始めた。
“ねぇ、アオ...嘘だよね...違うよね?”


それは目を疑う光景だった

アオと女の子が一緒に...?

明らかに友達ではない距離

女の子はアオの手を握ってる

「っ...!」

言葉にならない声と、以前見たあの光景が重なった

「ダン...行こ?」

思わず背を向け、わたしは歩き出した
早くこの場を去りたいと伝わるくらい、早歩きで...



えれなの後ろ姿に気づいた瞬間、
女の子の笑顔が一気に色褪せた



「おい!...待てよ、えれな!」


女の子の手を振りほどき

信号なんて気にもとめずに
アオはえれなを追って走り出した

足音に気づいたえれなが振り返るより早く
アオの手がえれなの腕をガシッと掴んだ

 

「なあ...今のの見て、勘違いしてんだろ
俺がまた裏切ったって思ってんだろ

でも違う 
本当に信じてくれ」

 

そう言いながら

わたしの震える手に
アオの手が重なる

だけどその手は冷たくて
いつものような強さもなかった

 

「あいつはただの幼馴染だ

お前と会う前からの関係で
でも付き合ってからは、連絡だってほとんど取ってない

今日だってそうだ
向こうが勝手に触ってきただけ 俺は...」

 

悔しそうなアオの声が

わずかに乱れる

 

「俺は今、お前しか見てない

それだけは...本当だってことだけは、わかってほしい」

 

「...でもな それでも信じられねぇって言うなら

ここで怒れよ
殴ってもいいし、泣いてもいい」

 



「だけど…俺から逃げんなよ」

 

アオの目が見れない...



「逃げるなよ

お前が泣いて背を向けるたびに
俺の心臓、ぶっ壊れそうになるんだよ」

 

わたしはアオから目を逸らしたまま
震える声で言葉をこぼした

 

「...夕方からずっと連絡なかったよね
今まで...あの子と一緒にいたんでしょ


何してたの...?」

 

ほんとは聞きたくなんてなかった
重い女って思われるのも嫌だった

でも口から零れてしまった言葉を
もう止めることはできなかった

 

涙を堪えるように
わたしはアオの背後に視線を逸らす

 

その先に立っていたのは
アオが“幼馴染”だと言ったあの女の子だった

 

そしてあの子はうっすらと笑って、こっちを見ていた





「クソ...あいつ、わざとだな

なぁ...ちゃんと俺の目、見て聞け
俺が今、何してたか」

 

「...俺は、あいつに会ってたわけじゃねえ
たまたま会っただけだ
勝手に話しかけてきたから、適当に流してただけ」

 

「お前に返信できなかったのは
スマホの電池が切れてただけなんだ

それだけのことで疑われて...傷つけさせて

ほんと、俺ってどうしようもねえな」

 
でも、それでもわたしは
アオの目を見れなかった




「こっち見ろよ
その目で、俺が嘘ついてるかどうか...見極めてみろ」

 

ぐっと距離を詰めてくるアオ


「...俺は、お前以外に興味ねぇよ

こんなにも悔しくなるのも
こんなにも...会えなくなるのが怖くなるのも

お前だけなんだよ えれな」

 

「そんなこと言わなくてもわかってるよ」って
今すぐ笑って答えたいのに

心がついていかない自分に、腹が立った

 

遠くから薄ら笑いを浮かべてこっちを見ているあの子にも

どうしようもなく嫉妬してる自分にも

全部が、情けなくて 悔しかった

 



 




「それだけお前が俺を好きってことなんだろ?

なぁ...そうなんだろ?」