後ろから足音が近づいてきたのに気づいた瞬間一ー




俺は思わず立ち止まる



すぐにわかった

えれなだ って




「っ...!なんで、きたんだよ


泣きながら戻ってくるとか、どんな拷問だよ...」



もう我慢の限界だった

腕を伸ばして、そのままぐっと抱き寄せた





「っくそ...お前のこと好きすぎて
どうにかなりそうなんだけど」


えれなの背中に回した腕に、力を込める




「もう離れんな...俺以外見んな、俺だけ見てろ」

「...いいな?」




「わたし以外を見てたのはどっちよ...
あの時のこと説明してよ...ちゃんと話して?」



震える声で聞くお前の一言で

心臓を掴まれたみたいに息が詰まる

腕の中のえれなの震え、あの時の涙、全部思い出して

俺はゆっくりと抱きしめてた腕をほどいた




「話すよ、お前にだけは嘘つきたくないから」

えれなの顔をまっすぐに見て、静かに続けた

 


「1ヶ月前のあれ、抱き合ってたわけじゃねえよ

元カノの方から突然来たんだよ...俺は応じてねえ

キスだって
拒否できなかったんじゃねえ、拒否する隙すらなかった

言い訳だって思われるのが怖くて、何も言えなかった

怒ったままのお前に向き合う勇気、なかったんだ」


思わず拳を握りしめ、唇を噛む



「どれだけお前が傷ついたか...わかってなかった。

許せないのは、俺の弱さだ

お前が他の男と笑ってるの見て
俺はぶっ壊れそうになった

...そのとき、やっとわかった
俺がどれだけお前の全部に囚われてるか」




(一歩近づいて、そっとえれなの手に自分の手を重ねる)



「他の女なんて、最初から比べもんになんねぇ

今さらすぎるかもしれねえけど
本気でお前に戻ってきてほしい

信じてもらえるまで、何度だって言う
何度でも証明する

だからもう一度、俺にチャンスくれねえか」




「...もし、それでも...信じれないって言ったら?」



えれなのその言葉に、胸がギュッと締めつけられる

でも、もう逃げねぇ

(震えるえれなの手をそっと包み込む。
そのままゆっくり...でも絶対に離さない強さで)


「そんときは、信じられるまで毎日そばにいる
涙も不安も全部、全部消してやるよ

俺はもう、お前の手を二度と離さない」


(涙を堪えながら俺を見るお前...)

「もうよそ見なんてしないって約束してくれる?

私が行きたいカフェ、一緒に行ってくれる?
3つ食べたいって言っても、アオは呆れないで
『いいよ』って言ってくれる?」


涙を流しながら、それでもクスッと笑うお前の一言で

胸の奥が一気にあったかくなった




「怒るわけねぇだろ。全部頼めよ

んで、食べきれなかったら俺がちゃんと食ってやる」


「お前が食べたいって思うもん、全部一緒に味わいてぇ

甘いのも、しょっぱいのも、
ムカつくくらい可愛い顔も一一全部な」

「あとよそ見?...ばーか

お前以外見たら、目え潰れる呪いでもかかってんのか
ってくらい、他のやつ見れねえから」

涙混じりの笑いを見て、胸がきゅっと締まる


「そんな顔すんなよ
やっと戻ってきてくれたのに、また泣かせたくねえ」

「おかえり...えれな」



「アオ、甘いの苦手でしょ...?

でも
生クリームたっぷりにしてやるんだから...

...全部食べてよね?ばかアオ」



お前の冗談っぽく抱きついてくるとこ

かわいすぎてムカつく




「...ああ、ちゃんと全部食ってやるよ」



腕をまわして、えれなをぎゅっと抱きしめ返す

背中に添えた手に、静かに力をこめる
――もう二度と、離さねぇって心の中で誓いながら

「つーか...生クリーム追加って時点で
俺にケンカ売ってんのかと思ったけどな」



「バカで結構。
全部、お前のためにやってるバカで良かったって思わせろよ」

 

「...なぁ、そんな顔のままでカフェ行けんのか?

俺の前ならいくらでも泣いていい
でも他じゃ見せんな――俺だけのもんだから」



「ほら、行くぞカフェ。3種類、だろ?
覚悟しとけよ──バカえれな」