少し離れたところで背を向けたままの俺




えれなの声も、悠の言葉も

一ーぜんぶ聞こえてる





笑わせんなよ...



忘れたことない?

居心地?

忘れられるかも?

ふざけんなよ...






拳を強く握りしめる

手のひらに爪が食い込んでも

痛みなんて感じねぇくらい頭ん中は真っ白で

でも心臓だけがうるさいくらい暴れてる





振り返ってやりたかった

今すぐ引き戻して「もう誰にも渡さない」って言ってやりたかった




でも一ー



「...そんな優しさ、俺は持ってねえ」



歩き出そうとしたその瞬間、背中から



一ーえれなの声が重なった


「わたしのこと、嫌いになっていいんだよ?悠...」


「馬鹿だな、そんなの一生なれないって

...ほら、アオくん行っちゃうよ?

ちゃんと気持ち、伝えておいで」





...ほらな

俺にはない、優しさ








「くそ...っ!なんなんだよ...」