ー卒業式当日ー
晴れ渡った空の下
校門には在校生や保護者の姿が賑やかに集まってた
式を終えた卒業生たちが
花束や卒業証書を抱えて笑い声をあげてる
俺はというと
制服の第二ボタンはもう
どっかのわがまま娘に取られてたけど...
胸ポケットに
えれなが選んでくれた小さな花が差してあった
──校舎裏
人目を避けた静かな場所で、えれなと2人だけになった
「...終わったな」
えれなを見つめながら、ふっと笑う
「終わっちまったけど
不思議と寂しくねぇや
お前が隣にいてくれるって、ずっと分かってるから」
手に握ってた卒業証書の筒を地面に置く
えれなの手をそっと両手で包んだ
「俺の高校生活
一番の思い出は何かって聞かれたら
...迷わず”お前”って答えるわ」
小さく息を吸い込んでから
目を逸らさずに続ける
「えれな
これからも俺のそばにいてくれよな
卒業しても 日常でも
10年先でも 50年先でも──
俺の“女”でいろよ?」
ふざけも意地悪もなく
真っ直ぐに、ただお前だけに向けた告白
すると──
えれなが背伸びをしながら微笑む
その表情に思わず目が細まる
「アオがいてくれたから
わたしの高校生活...
すっごく充実してたし
かけがえのない宝物になったよ!
アオ...わたしといてくれてありがとう
これからもずっと...末永くよろしくね?」
そう言って、えれながくしゃっと笑って
そっと唇を重ねてきた
えれなの唇が触れた瞬間
俺は自然と目を閉じる
その温度を
ゆっくりと抱きしめるように受け取った
長すぎず、短すぎず
まるで──2人の約束みたいなキス
唇が離れたあとも
俺はえれなの額にそっと自分の額を重ねる
「...こっちこそ ありがとな
「お前が隣にいてくれるってだけで
この先、何が来ても俺は負ける気がしねぇ」
えれなの手を、しっかりと強く握ったまま
「...これからの人生
ぜってえ飽きさせねぇから
“俺の女”として最後までよろしく」
そう言って
えれなをゆっくり抱きしめた
春のあたたかい風が
2人をやさしく包み込んでいた
──高校生活、完結
でも
2人の物語は
ここから “ほんとの始まり”
ーーENDーー



