独占彼氏〜独り占めして、何が悪い〜





ー最終日・朝一ー

窓の外から差し込む柔らかな陽射しが
白いシーツをじんわりと照らしてた

片肘ついて
まだ眠そうなえれなの顔をじっと見つめる

「...なあ もう朝だぞ」

えれなの頬にそっと指先を這わせながら

低く声を落とした

「今日でこの旅行も、終わりか」

静かに目を閉じて、額をそっと重ねる
こうして触れてる温度が、今はただ名残惜しい

「正直さ お前とのこの時間が終わるの

ちょっと寂しい...でも」



えれなの唇の端に軽くキスを落としてから

まっすぐに続けた

「学校も日常も またいつもの日々が始まるとしても

...俺の隣 変わらず、お前だけだから」

余計な飾りも照れもなく

ただ本音だけが自然と零れ落ちる

ーー

チェックアウトを済ませ
ホテルの前に集合する

“最後にみんなで集合写真撮ろ〜!”
“せっかくだから背景に海も入れてさ!”

先生がスマホを構え、ざわざわと並び出す中
自然とえれなに手を伸ばして肩を引き寄せる

「こっちこいよ

俺の隣じゃないと落ち着かねえ」

カメラが構えられるのを合図に
後ろからそっと腕を回した

肩越しにえれなの髪の匂いを感じる

「はーい撮るよー!せーの、ハイチーズ!」

シャッター音が鳴る

その一瞬だけ、時が止まった気がした

撮れた写真をみんなで覗き込み始める

“うわ〜なんかこの旅行、終わるの寂しい!”
“でもめっちゃいい写真〜!”

スマホ越しに写った俺とえれな
並んだその距離が、すげえ自然で
思わず小さく笑いながら呟いた

「...なんか、ちゃんと“思い出”になったな

じゃねえや、“宝物”か」

そう言って、えれなの手をしっかり握り直す

ーー

帰りのバスに乗り込む頃には

海風が少し冷たくなってた


でも、その冷たさすら心地よかった


バスの窓から最後に見える景色をぼんやり眺めながら

えれなを肩に寄せ、静かにその温もりを抱きしめる

日常に戻る前の、ほんの少しの余韻を

胸の奥に刻みながら

卒業旅行 終幕