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食事を終えた一同は
ホテルのロビー奥にある共有スペースへ移動していった
クッションが敷かれた広いスペース
みんな自然と輪になって座り込み、トランプを配りはじめる
“なにやる?やっぱババ抜き?”
“負けたら罰ゲームな〜!”
俺はもちろん、えれなの隣にちゃっかり座る
背中をソファに預けながらカードを手に取り
えれなを横目で見る
「...ルール
忘れてないよな?」
わざとトランプを1枚差し出して挑発する
「負けたら罰ゲーム
お前にだけは容赦しねえぞ」
カードの隙間から覗くお前の顔
こっちは静かに闘志燃やしながら、完全に楽しんでた
ババ抜きが白熱してく中――
“あーっ!ババ引いたああ!”
“え、アオまた勝ち!?強すぎだろ〜!”
俺は静かに最後のカードを伏せてニヤリと笑う
「・・終わりだな 罰ゲームは俺が決める」
ゆっくり立ち上がり、迷いなくえれなを指差した
「対象は
...えれな、お前な」
“うわ〜!やられた!”
“アオのターンきた〜!”
しゃがんでお前の目線に合わせていく
「罰ゲーム内容は...」
少し間を置いてから低く囁く
「ここにいる全員に聞こえるように
俺への好きなところ言え」
完全ロックオン状態
“出たよアオのSっぷりー!”
“こっちまでドキドキするって〜!”
咳払いしてお前は俺の目をまっすぐ見てくる
「意地悪なとこもあるけど、わたしに甘々なとこ
独占欲丸出しで、私のこと大好きすぎるとこ
わたしのことで頭いっぱいなとこ」
(お前、ほんと全部分かってんな...)
“ひゅ〜!!”
“それ完全に本命感!!”
騒ぐ声の中、俺はただじっとお前を見つめ続けた
「...バレてんな、全部」
立ち上がって、えれなの頭を撫でながら耳元で囁く
「ご褒美、あとでな 逃げんなよ」
そのまま何事もなかったように輪に戻る
“はーい次のゲームいく人〜!”
“心臓止まるとこだったわ”
“次は真実か挑戦〜!”
ゲームはすぐに次のステージへ
スマホのランダムがえれなを選ぶ
“えれなー!真実?挑戦?”
俺は腕組みながらゆっくり足を組み替え、静かに見つめる
「...さっきは真実だったよな?」
「んー
じゃあ挑戦にしてみよっかな?」
“おおおお!”
“挑戦きたー!”
すぐさまみんなが俺を見る流れになる
俺は静かに立ち上がり、えれなの前に近づいていく
「じゃあ、命令な」
「えれな 今この場でーー俺にキスしろ」
“うわあああああああ!!”
場が爆発するように盛り上がる中
えれなは照れて咳払い
そっと俺の頬に手を添えーー
ーチュ
優しく唇が触れ合い、ゆっくりと離れていく
「はいはい注目!ドSのアオさん照れてまーす!」
“やばーー!!”
“えれな攻めた!!”
“アオ固まってるぞ!”
……けど、俺は静かに呟いた
「お前な」
っくそ...やべえだろ今の...
「今夜マジで覚悟しとけ」
“うわあああああああ”
“夜の勝者確定〜!!”
席に戻りながら
えれなの耳にだけ低く囁く
「挑発して後悔すんなよ?」
もう目が笑ってねぇ
盛り上がる中、次の順番がランダムに回ってくる
“次は〜アオ!”
“来たぞーー!”
“絶対真実いけ〜!!”
一度大きく息を吐いて
スマホをポケットにしまいながら肩を回す
「ったく、しゃーねえな」
「で、どうする? 真実か、挑戦か」
(完全にえれなに向けた問い)
「挑戦かな?」
“おお〜!アオ挑戦きた!”
すぐさま周りから
“えれなやって!”
“アオのこと一番知ってるのはえれなだから〜!”
みんながえれなに振る中、俺はじっとお前を見据えてた
「お前からの挑戦 か
...悪くねえな」
「じゃあ...アオさんに挑戦状
みんなの前で
わたしをドキドキさせるようなワンフレーズと
キュンキュンするワンシーン
お願いします!」
“きたーーー!!”
“これぞ名物!”
俺は一瞬無言になってから、口の中を舐め、ゆっくり立ち上がる
「ったく、お前ほんと人前で調子乗るの好きだな」
ゆっくりえれなの目の前にしゃがみ込んだ
「ワンフレーズ...だろ?」
一呼吸置き、ぐっと詰める
「他の誰が見てようが関係ねえ
...今、お前のこと欲しくてたまんねえの
それが全部
顔に出てるってのに気づいてないのは
...お前だけ」
そのままお前の手をそっと取り、自分の唇に軽く触れさせる
「ワンシーンは...これでいいか?」
(目は一切逃げない)
“なに今の…”
“本気すぎて空気止まった…”
“息できなかった…”
全員が一瞬静まり返り、次の瞬間悲鳴と拍手が沸き上がる
“アオずるい!”
“あんなん惚れるわ!”
“えれな羨ましすぎる!”
騒ぎなんて聞いてねぇ
俺はそのまま、お前の手を取って立ち上がる
「はいはい終わりー!
俺ら先戻るから後は楽しめよー」



