ホテルのレストランに続く廊下を
えれなと2人で歩いていく
扉の前に近づくとすでに
何人かのクラスメイトが集まってた
“おーい!えれなー!アオー!こっちー!”
女子たちが手を振りながら呼んでくる
えれなの姿を見つけた瞬間女子のひとりが
「その服かわいすぎ」なんて声を上げた
俺はその様子を無言で見てたけど、ふっと笑って
「モテんのも大変だな」
そっとえれなの腰に手を添えて、軽く引き寄せる
「俺の隣、絶対キープしとけよ」
そう言って2人でレストランの中に入っていく
店内は広々として、並ぶ料理の数々
肉料理、パスタ、和食、サラダバー
そして一角に輝くデザートコーナー
もちろん、えれなの視線はすぐそっちへ向かってた
「おいおい...待て待て」
思わず笑いながら
えれなにトングを手渡す
「まず飯取るのが先な?
俺が盛ってやってもいいけど
甘いもんばっか取ったら皿ごと取り上げるぞ」
後ろにつきながらニヤっと笑う
「どれする?選べよ
お前が美味そうに食ってんの見るの好きなんだよな」
案の定
目の前ではしゃぎ出すえれな
「アオ見て!チーズケーキあるっ!チョコフォンデュもある!マシュマロも!!」
ご飯完全スルーでデザート一点突破
思わず吹き出しそうになって
えれなの腰をそっと押さえて引き止める
「ちょっと待てよ甘党女王
まずは最低一皿ちゃんとした飯食ってからな」
ったく...ガキかよ
「メイン→サラダ→スープ、この順で1セット
そのあとなら
チーズケーキ10個でもマシュマロの海でも許す」
「んーわかったよっ」
えれなが頬を膨らませながら
やっとご飯を取りはじめる
「え、ステーキだ!待って?
海鮮丼つくれるんだけど!
ネギトロとサーモンは絶対だよねー!」
後ろでその盛りっぷり見ながら
俺はクスッと笑う
「...おい、誰だよさっき
デザートしか見えてない
とか言ってたやつ」
自分も皿を取りながら横に並ぶ
「ネギトロとサーモンはわかるけど..
そこに温泉卵乗せたら最強なんだぞ」
なにがすげぇってお前
飯にもスイーツにも本気すぎて可愛いんだよな
ぽつりと呟きながら、また料理に手を伸ばした
山盛りになったお盆を持って
2人でテーブルに戻ると
すでにみんな食べ始めて盛り上がってた
“えれな、それ全部1人で?”
“アオ、それ見守ってるのおもろいんだけど〜笑”
冷やかされながら
無言でえれなの背中を軽く叩いて隣にドンと座る
「ほら食うぞ
残したら罰ゲームな
ちゃんと味わって食えよ?」
周りはどんどんテンション上がってく
“ねーねー!このあと夜の自由時間さ、みんなでトランプとかやらない?”
“それいい!大富豪とかババ抜きとか!”
“罰ゲームアリにしたら盛り上がりそう〜”
莉子がえれなをニヤニヤしながら見て声をかける
“えれなは?アオと2人で部屋にこもる気じゃないよね〜?”
周りが一斉に盛り上がり始める
俺は飲み物を置いて ふっと苦笑しながら
「...いや、
みんなでやるなら付き合う...ただし」
隣のえれなにだけ視線を向け、口角を上げる
「途中で消えても文句言うなよ?」
お前はこっちを見てすぐに
「参加するに決まってんぢゃーん
それにご覧の通り...
部屋にこもらなくてもアオは人目なんて関係なしだから」
えれなが舌を出して俺を煽ってくる
俺はその顔を細めてニヤリと笑い返す
「...口の利き方 調子乗ってんじゃねぇか?」
テーブルの下で、えれなの太ももをそっと撫でる
「人目、気にしないって言ったのお前な?
...このままでもいいんだよな?」
何事もなかったように普通に食事を続ける俺
“アオってさ〜無言で仕掛けてくるからタチ悪いんだよな〜笑”
“えれな頑張れよ〜笑”
周囲の声も流しながら、隣の反応を密かに楽しむ
そして
“さて、そろそろ自由時間とでも行くか〜!”
夜は、まだ始まったばかりだ
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