別れて一ヶ月が経った一一
あのカフェで
アオが元カノと抱き合ってるのを見て
わたしは一言も交わさずに、勝手に別れを告げた
あれから一わたしは、悠(ゆう)と付き合い始めた
悠は優しくて、真っ直ぐで
絶対に不安になんてさせない人
一そう、アオとは真逆のひとー
それなのに
優しくされればされるほど
アオの影を探してしまう...
放課後の商店街
悠と並んで歩いていた
夕焼けに照らされたガラス窓
にぎやかな店先の笑い声が風に流れていく
「このあとさ」
悠が何気なく言った
「ん?」
振り返ると
悠はポケットに手を入れたまま
少し視線を逸らしていた
「どこ行きたい?」
「んー……甘いもの食べたいかも」
わたしは小さく笑って
「でも食べたいものありすぎて...迷っちゃうんだよね」
ちょっと照れたような声だった
「じゃあ...全部頼んじゃえ!残ったら俺が食べてあげる」
悠の言葉に"え?食べ切れるの?"と笑って返し
ふたりはゆっくりと歩き出す
数分後、カフェの前で足を止めた
ガラス越しに見える内装
見慣れた看板
胸の奥が、少しざわついた...
「どうした?」
悠が隣で尋ねる
「ううん、なんでもない」
ごまかすように笑いながらも
視線は扉の奥に吸い込まれていた
「ここ、入ってみる?」
「...うん」
少しだけ迷ってから
頷いた
カラン、とドアベルに手をかけた瞬間だった
「そこで、何やってんの」
低くて鋭い声が背後から響く
振り返ると
そこには、アオが立っていた
制服の上着を脱いで肩にかけたまま
ゆっくりと近づいてくる
視線は真っすぐ、わたしを見ていた
「今の顔、俺以外に見せんなよ」
...息が詰まりそうになった
悠が何かを言おうとしたけど
アオの視線だけで、その言葉は止まった
「...ざけんな」
わたしは
一歩も動けなかった
──



