放課後
教室であくびしながら背伸びしてたら
背後から突然肩をポンっと叩かれた
「帰ろっ?」
「うぉ!!」
思わず椅子から少し浮いて咳払いでごまかす
「おい 心臓止まるかと思っただろーがよ
...ほんと油断も隙もねえなあ お前は」
振り返ると、お前が笑って立ってた
それだけで全身の力が抜けてく
「帰るか」
机の横に置いたカバンを肩にかけて
改めてお前の方を見る
「ほら、行こ?」
お前が俺の手を引っ張って教室を出る
歩き出して少し経った頃、不意にお前が聞いてきた
「ねぇ アオ
今...アオは幸せ?」
その言葉に、思わずびっくりして顔を上げる
「最近思うんだあ アオを見るたび、よく
“あぁ好きだなぁ”とか“かっこいいなぁ”とか
“もしもアオと...”っていろんなこと考えちゃうの
でも
そんなこと考えてる時点で、もうわたし幸せなんだなって」
お前が笑ってそう言うたびに、胸の奥が一気に熱くなる
「お前な...いっつも不意打ちすぎんだよ」
手
握ってたのに...
言葉に全部持ってかれて心まで握られてる気がした
「幸せかって?
...バカみたいに幸せに決まってんだろ」
お前の目をまっすぐ見つめる
「えれなと手つないこうして他愛もないこと話して
それだけで俺 "もう明日いなくなっても悔いねぇ"
ってくらい幸せだよ」
でも——
明日も明後日も、もっとお前と重ねてくって決めたから
“もしも”じゃなくて“絶対”
にしような?
...お前と、未来の全部
手をぎゅっと強く握り直して
「今夜さ
お前に“夢の話”じゃなくて“現実の約束”
したいんだ」
歩いてるうちに、もうお前の家の前に着いてた
「現実の約束...?
アオが話したいことあるなんて珍しいから
ゆっくり聞かせて?
...の前に、急いで荷物持ってくるから待ってて?」
お前が微笑んで
玄関のドアを開けてバタバタと階段を駆け上がっていく
「...あぁ、待ってる」
玄関先で遠ざかっていく足音を聞きながら
ポケットに手を入れた
中にはずっと握りしめてた “それ” がある
現実の約束——
口だけじゃ足りねぇから
ちゃんと形にして渡す
お前の手の温もりを思い出して背筋を伸ばす
お前が決めた道がどんな未来でも
"絶対隣にいる覚悟"見せるから
お前が階段を降りてくる足音が聞こえはじめた
扉の前に立って、俺はお前を迎える準備を整える
「っはあ...っ!はあ...お待たせ!っはぁ...っ行こっか!」
肩で息するお前に苦笑しながら
自然と手を伸ばして前髪をそっとかき上げた
かわいいんだよ、お前
こんな姿まで愛おしいって思える自分が怖えわ
そっと手を取って歩き出す
...行こっか
今日は、ずっと伝えたかったことやっと言える気がする
えれな——
この先どんな未来があっても
“お前と一緒にいたい”って気持ちだけは
どんな進路にも どんな不安にも負けねぇ
ちゃんと話すから...そのときは
お前の本音も聞かせてよな?
お前が少し頷いて微笑んだのを確認して
ゆっくりと歩き出した
その道の先には“今夜”の俺たちが待ってる
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