昼休み 学食

 

俺とえれなが席に座った瞬間、教室がざわっと騒がしくなる

 

「...来たな」

 

視線の先

例の“転校生”が何食わぬ顔で隣のグループに混ざって座る



無視したつもりだったけど

横にいるえれなが、ほんの一瞬だけ箸の動きを止めたのが
ちゃんと見えてた

 

「おい...ピーマン、取るなって言ったのに」

 

冗談っぽく、からかいながら

隣にいるえれなを見た。

それでも

えれなの横顔は、どこかぎこちなかった

 

 

放課後 昇降口

 

靴を履いてると、すぐそばで女の声が聞こえた

 

「ねぇアオ、帰りちょっと話せる?」

 

顔を上げる
そこにいたのは、あの女だった

背後から、えれなが近づいてくる気配に気づき――

 

「無理」

 

目を逸らさず、短く、はっきり言い切る

 

そして振り返り、えれなの手を強く握る

 

「帰るぞ “俺の女が待ってるんで”」

 

わざと大きめに言ったその一言に、
周囲の空気がぴりっと張り詰めた

 

でも

その瞬間
あの子の口元が、わずかに笑ったように見えた

その笑みに
ゾクリとするような冷たさが、背筋を走る

 

 

"帰るぞ"と言った俺の声に

えれなが顔を見上げてくるのがわかった



その目は、何かを訴えてた

言葉にしなくても...全部伝わる

怖かったんだろ

あの子の目も、あの笑みも、全部

 

でもな

 

「俺が見てんのはお前だけだよ」

「他の奴がどんな目で見てこようが、どんな企み抱えてようが、関係ねぇ」

 

手をぎゅっと握り直す

そのまま、えれなの顔を引き寄せて
額をそっとくっつけた

 

「心配すんなよ、俺を信じてろ」


また俺を選んだこと、絶対間違いじゃねぇって思わせてやるから